いよいよ今週末(5/9)にAPECさんをお招きしての筆記試験対策セミナーが、那覇空港にほど近い豊見城市で開催されます。
詳しくはSUKIYAKI塾沖縄でいごの会HP
http://sukiyaki-okinawa.jimdo.com/
今年も昨年のセミナーに引き続き、建設環境の講師には平成25年度試験に合格したかたをメインにお願いしてわたしは事務方にまわってアレコレしています。
といっても一応講師として参加するわけですから、わたしなりのアドバイスをしなければと、これまでの試験を振り返ってみました。
平成25年度に筆記試験の出題方法が変わり、これまで2回の試験がありました。
選択Ⅱでは、4問のなかから2問を選択してそれぞれ解答用紙1枚に専門知識を簡潔にまとめるⅡ-1と、2問中1問を選択して解答用紙2枚以内に専門知識の応用能力として、業務を行う場合の実施手順を述べさせるⅡ-2があります。
また、選択Ⅲでは課題解決能力が試され、これは2問中1問を選択して解答用紙3枚以内に論理的に述べることが求められます。
平成25年度、平成26年度の設問テーマをみると、以下のように分けられます。
①生物多様性の保全と再生
②循環型社会の形成
③環境影響評価の手続き(法アセスとミニアセス)
④建設事業での環境配慮
⑤地球温暖化対策(緩和策としての低炭素都市づくり)
⑥閉鎖性水域の水質改善
⑦ヒートアイランド対策
⑧土壌汚染対策(建設発生土)
また、さらに遡って平成18年度~平成24年度までの記述問題(A・B)のジャンルをみますと、上記のほかには以下のものがありました。
⑨再生可能・持続可能エネルギー
⑩ISO14001
⑪景観法に基づく景観形成
⑫廃棄物処理法
⑬土砂管理(流域土砂、海岸浸食)
平成24年4月に閣議決定された第4次環境基本計画では、目指すべき持続可能な社会の姿として「
低炭素」、「
循環」、「
自然共生」の各分野を統合的に達成する、とあります。
ということから考えると、上記3分野に関するものは今後も継続的に出題されると思います。
今年度の試験で問われるジャンルが何となく見えてきたところで、今回は「
自然再生事業」を取り上げます。
自然再生事業を行うにあたって検討すべきこと、事業の実施手順や留意点等がⅡ-2、あるいはGBO4の結果等も踏まえてこれからさらに生物多様性保全を加速するためにはどのような自然再生事業を行うべきかがⅢで問われる可能性があります。ニオイます。
自然再生推進法
過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的とした自然再生推進法が、平成15年1月1日より施行されています。この法律は、我が国の生物多様性の保全にとって重要な役割を担うものであり、地域の多様な主体の参加により、河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林、サンゴ礁などの自然環境を保全、再生、創出、又は維持管理することを求めています。
政府は、自然再生に関する施策を総合的に推進するための基本方針「自然再生基本方針」を平成15年4月1日に決定いたしました。自然再生推進法は、この自然再生基本方針の決定を受けて本格的に運用が開始されることとなります。政府においても環境省、農林水産省、国土交通省の出先機関等に相談窓口を設置するとともに、中央においても3省及び関係行政機関からなる自然再生推進会議を設けて、自然再生の推進に努めていくこととしています。国や地方公共団体の計画によるのではなく、地域の多様な主体の発意により、国や地方公共団体も参画して自然を取り戻すための事業が始まる・・・・・今までにない全く新しい発想の法律です。この法律が積極的に活用されることを期待しています。
【高知市五台山 牧野富太郎記念館】
自然再生事業についてはその指針が平成17年に日本生態学会でまとめられています。
自然再生事業指針(PDF)の要旨を以下に掲載します。
【自然再生事業の対象】
自然再生事業にあたっては, 可能な限り, 生態系を構成する以下のすべての要素を対象にすべきである.
1)生物種と生育, 生息場所
2)群集構造と種間関係
3)生態系の機能
4)生態系の繋がり
5)人と自然との持続的なかかわり
【基本認識の明確化】
自然再生事業を計画するにあたっては, 具体的な事業に着手する前に, 以下の項目についてよく検討し, 基本認識を共有すべきである.
6)生物相と生態系の現状を科学的に把握し, 事業の必要性を検討する
7)放置したときの将来を予測し, 事業の根拠を吟味する
8)時間的, 空間的な広がりや風土を考慮して, 保全, 再生すべき生態系の姿を明らかにする
9)自然の遷移をどの程度止めるべきかを検討する
【自然再生事業を進めるうえでの原則】
自然再生事業を進めるうえでは, 以下の諸原則を遵守すべきである.
10)地域の生物を保全する(地域性保全の原則)
11)種の多様性を保全する(種多様性保全の原則)
12)種の遺伝的変異性の保全に十分に配慮する(変異性保全の原則)
13)自然の回復力を活かし, 人為的改変は必要最小限にとどめる(回復力活用の原則)
14)事業に関わる多分野の研究者が協働する(諸分野協働の原則)
15)伝統的な技術や文化を尊重する(伝統尊重の原則)
16)目標の実現可能性を重視する(実現可能性の原則)
【順応的管理の指針】
自然再生事業においては, 不確実性に対処するため, 以下の順応的管理などの手法を活用すべきである.
17)事業の透明性を確保し, 第3者による評価を行う
18)不可逆的な影響に備えて予防原則を用いる
19)将来成否が評価できる具体的な目標を定める
20)将来予測の不確実性の程度を示す
21)管理計画に用いた仮説をモニタリングで検証し, 状態変化に応じて方策を変える
22)用いた仮説の誤りが判明した場合, 中止を含めて速やかに是正する
【合意形成と連携の指針】
自然再生事業は, 以下のような手続きと体制によって進めるべきである.
23)科学者が適切な役割を果たす
24)自然再生事業を担う次世代を育てる
25)地域の多様な主体の間で相互に信頼関係を築き, 合意をはかる
26)より広範な環境を守る取り組みとの連携をはかる
上記に加えて
自然再生ハンドブックでは以下の留意点がまとめられています。
【事業を進めるうえでの留意点】
(1)一貫して必要なもの
(2)全体構想段階での指針
(3)個別実施計画段階での指針
詳しい内容は、指針本文やハンドブックを手にとって確認してください。