2021年8月26日木曜日

環境影響評価制度における「報告書」手続について その2

ご無沙汰しております。すっかりブログ更新が途絶えてしまいましたね。通常ペースといえば通常ペースなのですが、筆記試験を挟んでの期間は投稿ラッシュでしたからね。そして「新型コロナに感染しないかぎり更新します」なんて調子のよいことを書いた記憶があるので、もしかして心配してくださったかたがいたかもしれませんね。
わたしはというと、先日にワクチン2回目の接種が済み、いまは経過を観察しているところです。言われるような副反応も覚悟していたのですが、1回目よりも腕の痛みがなく心配していた発熱もまったくなくって、ちょっと拍子抜けしているところです。まぁ良かったではあるんですけどね、本当にこれで大丈夫なのかな?とも思わなくもないところです。勝手なものですね。

しかし沖縄の感染率は凄まじいことになっています。東京なんかを遥かに超えているともいえる本当に酷い状況です。いよいよトリアージが始まりそうで(始まっているのか)怖いです。
でもそれはそれとして世の中がある意味並行して進んでいることにも驚いています。
先週は有名な観光地でもある離島に調査のため出張していたのですが、県外からの観光客がそれはたくさん訪れていました。家族連れ、若者グループにカップルたちでフェリーや高速船はごった返していました。それに沖縄のお盆(旧盆なので今年は8/20~22)が重なってましたからね。帰省していたひとも例年よりは少ないとはいえそれなりにいたのかもしれません。

そんな沖縄県での感染状況から、APECさんを招いて9月に那覇で開催することを予定していたRCCM・技術士1次試験対策セミナーですが、今年も中止することとなりました。特に今年度からRCCMの試験方法が刷新されたのでAPECさんの講義をナマで聴講することを楽しみにしていたので余計に残念です。技術士1次試験から18年、RCCM試験から12年が経過し、すっかりわたしの経験談は古びたものになってしまいました。定期的にセミナーを拝聴することで情報を更新していたのですがどうしたものでしょうか。

そのRCCM(建設環境部門ほか)や技術士1次試験(環境部門ほか)でも必出の環境影響評価、前回の第2弾として取り上げます。しかも同じネタです(笑)。
前回にご紹介した「那覇空港滑走路増設事業に係る報告書」に対する環境大臣意見を踏まえて、こんどは国土交通大臣から意見が出されました。
ご覧になったらおわかりの通り、いま現在の国の環境政策がそのまま反映されたような意見になっています。本事業ならではというものは(海域生態系に対する意見を除いて)ないといってもいいかもしれません。

那覇空港第2滑走路
【沖縄県那覇市】

那覇空港滑走路増設事業に係る報告書に対する国土交通大臣意見について

令和3年8月20日

 本日、環境影響評価法第38条の5の規定に基づき、那覇空港滑走路増設事業に係る報告書について、事業者である大阪航空局及び沖縄総合事務局に対し、国土交通大臣意見を述べましたので、お知らせします。
 なお、国土交通大臣意見の内容は別紙のとおりです。


環境影響評価法において、事業者から報告書※の送付を受けたときは、主務大臣は環境大臣の意見を勘案し事業者へ報告書に対する意見を述べることとされております。
今回の環境影響評価手続きでは、令和3年6月30日に事業者から国土交通大臣へ報告書送付がなされ、8月6日に環境大臣から国土交通大臣へ報告書に対する意見があったところです。

※報告書
 事業の実施後に事後調査の結果や環境保全措置の内容、効果等を取りまとめ、報告・公表するものである。

添付資料

報道発表資料(PDF形式)PDF形式

国土交通大臣意見(PDF形式)PDF形式

2021年8月9日月曜日

環境影響評価制度における「報告書」手続について

なお、本事業は、環境影響評価法に基づき報告書手続を行う初の案件である。
なんて書いてあったので思わず取り上げてしまいました。
環境影響評価手続きについては建設環境科目で必ず出題されるジャンルです。皆さん、手続きの流れについては参考資料に頼らずとも人に説明できるくらいに頭に入れてくださいね。
その手続きなかでいちばん地味なのが、アセスの最終章となる「報告書」手続きです。地味というだけあって、これまであまたの環境アセスが実施されてきましたが、驚いたことに、「なお、本事業は、環境影響評価法に基づき報告書手続を行う初の案件である。」なんだそうです。
その記念すべき1発目の事業がこれまたなんとわたしも関わった「那覇空港滑走路増設事業」とのこと。嬉しいですね。残念ながらこの報告書の作成には直接的に関わってるわけではないのですが、それでも報告書に記載されているであろう調査データのいくつかはわたしの肉体を通して出てきた数字もあるはずです(変態的な表現ですね(笑))。

まぁ報告書そのものを熟読する必要はないですが、「報告書」にはどんなことが取り上げられていて、それについてどんな意見が出されたのかをチェックしてみるのも勉強になると思います。
環境大臣が言うことには、「今後、望まれる事項として(1)事後調査等の結果の継続的な公表や(2)那覇空港環境計画の見直しに当たり、①2030年度における温室効果ガス削減目標及び2050年カーボンニュートラルと整合した環境計画となるよう検討を進めること、②プラスチックごみの発生抑制及び循環利用に配慮すること等を求める」なんだそうです。こういった意見を提出するんですね。なかなか面白いです。

環境影響評価制度における「報告書」手続について
環境影響評価制度は、事業者自らがあらかじめ事業の実施前に環境への影響を評価し、その結果を公表して、国、地方公共団体、国民から意見を聴き、それらの意見を踏まえることで、環境の保全の観点からよりよい事業が行われるようにする手続。
評価書に記載された環境保全措置の実施状況や事後調査の結果について、国民や行政機関が確認できる仕組みとして、前回法改正(H23)において、事業実施後の環境保全措置の結果等を示す報告書の手続を導入

評価書の手続が終わり、基本的に工事を完了した段階において、事業者が
① 工事中及び供用後の環境の状況等を把握するための調査等の事後調査の結果や
② 事後調査により判明した環境の状況に応じて講ずる環境保全措置、
③ 評価書に記載した環境保全措置のうち効果が不確実なものの実施結果 等
を取りまとめ、報告・公表するもの。
報告書に係る手続を行うことにより、事業実施後に行われた環境保全措置の内容や効果等を報告書にて公表。
この際、事業者において評価書手続でとりまとめた環境保全措置等を適切に実施すること等を求めるため、免許等を行う者等は環境大臣の意見を勘案して、事業者に必要に応じ環境の保全の見地からの意見を述べることができる。
環境影響評価後の環境配慮の実効性を担保
環境影響評価制度自体の信頼性の確保と後続事業の予測・評価技術の向上等にも資する

こうして取り上げてみると、なんだか選択科目Ⅱー1あたりで出題されてもおかしくありませんね。

那覇空港第2滑走路
【沖縄県】

令和3年8月6日
総合政策
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那覇空港滑走路増設事業に係る報告書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、8月6日、「那覇空港滑走路増設事業に係る報告書」に対する環境大臣意見を国土交通大臣に提出した。
 本事業は、内閣府沖縄総合事務局及び国土交通省大阪航空局が、沖縄県の持続的振興発展への寄与等を目的とし、那覇空港の既設滑走路の西側1,310mの沖において、160.3haの公有水面を埋め立て、2,700mの滑走路を増設したものである。
 本報告書には、本事業の実施に伴い講じた環境保全措置の経緯、事後調査の結果等の情報が整理されており、本事業者は、環境影響評価手続の趣旨を踏まえ、本事業の実施による周辺環境への影響の回避又は低減を図っていると考えられる。
 環境大臣意見では、今後、望まれる事項として(1)事後調査等の結果の継続的な公表や(2)那覇空港環境計画の見直しに当たり、①2030年度における温室効果ガス削減目標及び2050年カーボンニュートラルと整合した環境計画となるよう検討を進めること、②プラスチックごみの発生抑制及び循環利用に配慮すること等を求めるとともに、引き続き、周辺環境に配慮しつつ、那覇空港が沖縄県の持続的振興及び発展に寄与すること等を期待する旨を述べている。
 なお、本事業は、環境影響評価法に基づき報告書手続を行う初の案件である。

1.背景

 環境影響評価法は、滑走路の新設(2,500m以上)又は延長(延長後の滑走路2,500m以上かつ延長500m以上)を伴う飛行場及びその施設の変更の事業を対象事業としており、環境大臣は、送付された報告書※について、国土交通大臣からの照会に対して意見を述べることができる。本件は、この手続きに沿って意見を提出するものである。
 今後、国土交通大臣から事業者である内閣府沖縄総合事務局及び国土交通省大阪航空局に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられることとなる。

※報告書:事業の実施後に事後調査の結果や環境保全措置の内容、効果等を取りまとめ、報告・公表するものである。報告書手続は、平成23年の環境影響評価法改正で導入された手続であり、平成24年4月1日以降に評価書の公告及び縦覧を行った事業に適用される。

2.対象事業の内容

  ・事 業 者  内閣府沖縄総合事務局及び国土交通省大阪航空局

  ・事業規模   那覇空港の既設滑走路の西側1,310mの沖に、160.3haの公有水面を埋立て、2,700mの
         那覇空港第2滑走路の増設をしたもの

  ・対象事業が実施された区域及び埋立区域の位置

   ●滑走路の新設を伴う飛行場及びその施設の変更
    沖縄県那覇市字大嶺、沖縄県那覇市字大嶺及び豊見城市字瀬長地先公有水面

   ●公有水面埋立て
    沖縄県那覇市字大嶺及び豊見城市字瀬長地先公有水面

3.環境大臣意見

   別紙1のとおり。

  (参考)環境影響評価に係る手続

   【方法書の手続】
   ・縦覧         平成22年8月2日~平成22年9月1日
   ・沖縄県知事意見提出  平成22年12月27日

   【準備書の手続】
   ・縦覧         平成24年9月28日~平成24年10月29日
   ・沖縄県知事意見提出  平成25年3月10日

   【評価書の手続】
   ・送付         平成25年6月26日
   ・環境大臣意見提出   平成25年8月5日

   【第2滑走路供用開始】
   ・令和2年3月26日

   【報告書の意見照会】
   ・令和3年6月30日    国土交通大臣から環境大臣に意見照会
   ・令和3年8月 6日    環境大臣から国土交通大臣に意見提出

添付資料

2021年8月8日日曜日

外来生物対策の今後のあり方に関する提言

今日で東京オリンピックが終わります。オリンピックの間というもの、沖縄はなんだかんだ言ってずっと台風の影響下にありました。そのおかげなのか、ここのところずっと全国の天気予報で取り上げられる都市のなかでいちばん最高気温が低いのが那覇です。湿度は高いのですが、たしかに太陽が顔を出すことが少なく風が強いので過ごしやすいですね。
なんて呑気なことを言っている状況ではなくなってきました。沖縄の新型コロナ。人口比ではあの東京を超える全国最悪の新規感染数が続いています。軽症レベルでは入院できなくなっているところもあるようです。ニュースにもありましたが、限られた病床数ではこれから中等症でも厳しくなるのかもしれません。もはやここまでに至ると自分が感染したときどうすべきかをシミュレーションしておくべきですね。。。。
わたしが元気でいるという便りになるかもと、無事でいるうちは定期的にこのブログをアップしてゆきますね。

先日の外来植物対策に続いて、本日も外来種対策ネタです。今後のあり方の提言です。取り組むべき方策の方向性という感じになりましょうか。特に目新しいものはないようでしたが、整理の仕方とか参考にしてみてください。外来種対策について多面的な視点で課題を抽出しその内容を観点とともに示せ、なんて出題がされたときに方策の多様性(これで多面的な視点をアピールできます)を念頭にバリエーション豊かに配置するとバランスもとれて見栄えがイイ(試験官ウケがイイ)のではないでしょうか。

旭川空港
【北海道旭川市】

令和3年8月6日
自然環境
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「外来生物対策の今後のあり方に関する提言」について

 外来生物対策の今後のあり方について専門的な観点から検討するため、令和2年度から令和3年度にかけて「外来生物対策のあり方検討会」を開催してきました。今般、本検討会において「外来生物対策の今後のあり方に関する提言」が取りまとめられましたので、お知らせいたします。

1.概要

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)は平成17年に成立し、平成25年に改正法が成立(平成26年施行)しています。

 改正法施行後5年を経過したことから、改正外来生物法附則第5条に基づき、令和2年2月から10月にかけ「外来生物法施行状況評価検討会」において法施行状況の点検・評価、課題整理を行いました。当該検討会の結果を基に、今後の外来生物対策のあり方に関する検討を行うための検討会(「外来生物対策のあり方検討会」)を令和3年1月に設置し、計5回の会議を開催してきました。本検討会ではこれまでの議論の成果について「外来生物対策の今後のあり方に関する提言」として取りまとめられました。

 本提言では、外来生物法の改正事項や対策の現状等の近年の動向を踏まえ、(1)特定外来生物の効果的な選定、(2)飼養等許可の適切な執行管理、(3)水際における意図的及び非意図的な導入対策の推進、(4)国内に定着している特定外来生物の防除対策の推進、(5)特定外来生物以外の外来種対策の推進、(6)各主体の協力と参画、普及啓発の推進、(7)調査研究の推進の7項目について、今後講ずべき必要な措置が取りまとめられています。

 詳細については提言の概要や本文を御参照ください。

2.今後の対応

 関係省庁とも連携しつつ、本提言の内容や社会情勢の変化を踏まえて更なる検討を進め、制度的・政策的な措置を講じてまいります。

添付資料

2021年8月3日火曜日

地域と連携した外来植物防除対策ハンドブック、河川事業における生態系保全に関する評価の手引き

ワクチン接種から2日が経ちました。注射のときは痛みはなかったのですが、夜、だんだんと筋肉痛のようになり始め、翌朝からは腕を上げるたびに軽く痛みが走るようになりました。すごく痛いわけではないのですがこれがなんかの嫌がらせのようにも感じてなかなか面倒だなと思っていたところ、2日経った今朝にようやく(というのも大げさですが)症状が軽くなっていました。接種直後の副反応については峠を越えたようです。まぁ1回目ですからね。2回目はそれなりに覚悟しておかねばならないようです。どうなりますか。

先日、河川のインフラ整備に携わるかたならよくご存じのリバーフロント研究所(旧リバーフロント整備センター)、ここに勤める知り合いから生物多様性保全ジャンルで実務的なハンドブックや手引きが出たことを紹介してもらいましたので、ブログでも取り上げますね。
選択科目Ⅱ-2対策にうってつけです。予想外の出題に対しても、1回目を通しておくだけでだいぶ違うと思いますよ。来年の試験までは1年弱ありますが、これから受験しようというひとは、いまからこういった資料をコツコツと読み進めていってください。たくさんの資料に触れるとそれだけ実力がつきますし、たとえジャンルが違えどそれが出題予想の勘、さらには試験会場で途方に暮れた際の突然の閃きにもつながります。集中すると不思議と降りてくるんですよね。

そろそろジョギングを再開してもいいですか
【東京都千代田区北の丸公園】





地域と連携した外来植物防除対策ハンドブック(案)
[令和3年7月 国土交通省河川環境課]
 このハンドブックは、日本の河川で問題となっている外来植物10種について、その特徴や防除方法を分かり易く説明したものです。主に外来植物に詳しくない地域の皆さんや河川管理者が、外来植物の知識を身につけたり、駆除活動に参加したりする場面でご活用いただくことを目的としています。とりまとめをリバーフロント研究所が実施しました。

<目 次>
 外来種について
  河川における外来種問題
  外来植物の現状
  外来種対策の考え方
 個別対策編
  本書で対象とする外来植物
  (ハリエンジュ等10種を紹介)
 参考
  優先対策箇所の設定事例
  千曲川の事例、リスクマップ

河川事業における生態系保全に関する評価の手引き(実務者向け)(案)
〜生態系ネットワーク形成に向けて〜 [令和 3 年 6 月版]
 本手引きは、河川管理者が河川を基軸とした生態系ネットワークの構築を行う際に、計画・整備・維持管理段階における生態系保全に関する評価手法の適切な選択方法を示し、効果的・効率的な生態系ネットワークの形成を支援することを目的にとりまとめたものです。
とりまとめにあたり有識者検討会の運営事務局をリバーフロント研究所が実施しました。

<目 次>
1. 河川を基軸とした生態系ネットワークについて
2. 評価の基本的な考え方
 2.1 事業への評価の導入
 2.2 生態系ネットワークの評価手法
 2.3 生態系ネットワーク形成の評価事例
3. 河川を基軸とした生態系ネットワークをより詳しく学ぶ
 3.1 生態系ネットワークの種類
 3.2 生態系ネットワークの重要性
 3.3 河川を基軸とした生態系ネットワークの現状と課題