筆記試験の合格発表まで早いものであとひと月ですね。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
神の島 久高島
わたしのブログ投稿記事の閲覧ランキングをみてみると、次年度試験に向けたネタが上位を占めています。次年度試験を受験するひとたちがチェックしてくれているのだと思います。
そんな方たちに向けて今日は投稿してみます。
3月末に日本技術士会から発表された『平成31年度 技術士試験の概要について』というPDFがあります。それによると、平成31年度試験からの技術士第二次試験の評価項目に「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」というのが掲げられています。
いったいどういったことなのか、『平成31年度 技術士試験の概要について』から抜粋します。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
●専門的学識
・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識 及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
・技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
●問題解決
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
・複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。
●マネジメント
・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
●評価
・業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
●コミュニケーション
・業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
・海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
●リーダーシップ
・業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
・海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
●技術者倫理
・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。
●継続研さん
・業務履行上必要な知見を深め、技術を修得し資質向上を図るように、十分な継続研さん (CPD)を行うこと。
となっています。
『平成 31 年度技術士第二次試験に関する出題内容等について』によると、必須科目、選択科目のそれぞれで評価項目が異なっています。下記に貼り付けました。
【A】総合技術監理部門を除く技術部門
Ⅰ 必須科目
「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの
【概 念】
●専門知識
専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理等に関わる汎用的な専門知識
●応用能力
これまでに習得した知識や経験に基づき,与えられた条件に合わせて,問題や課題を正しく認識し,必要な分析を行い,業務遂行手順や業務上留意すべき点,工夫を要する点等について説明できる能力
●問題解決能力及び課題遂行能力
社会的なニーズや技術の進歩に伴い,社会や技術における様々な状況から,複合的な問題や課題を把握し,社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て,問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力
【出題内容】
現代社会が抱えている様々な問題について,「技術部門」全般に関わる基礎的な エンジニアリング問題としての観点から,多面的に課題を抽出して,その解決 方法を提示し遂行していくための提案を問う。
【評価項目】
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,問題解決,評価,技術者倫理,コミュニケーションの各項目
Ⅱ 選択科目
1.「選択科目」についての専門知識に関するもの
【概念 】
「選択科目」における専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理等に関わる汎用的な専門知識
【出題内容】
「選択科目」における重要なキーワードや 新技術等に対する専門的知識を問う。
【評価項目】
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,コミュニケーションの各項目
2.「選択科目」についての応用能力に関するもの
【概念】
これまでに習得した知識や経験に基づき,与えられた条件に合わせて,問題や課題を正しく認識し,必要な分析を行い,業務遂行手順や業務上留意すべき点,工夫を要する点等について説明できる能力
【出題内容】
「選択科目」に関係する業務に関し,与えられた条件に合わせて,専門知識や 実務経験に基づいて業務遂行手順が説明でき,業務上で留意すべき点や工夫を要する点等についての認識があるかどうかを問う。
【評価項目】
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,マネジメント,コミュニケーション,リーダーシップの各項目
Ⅲ 選択科目
「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの
【概念】
社会的なニーズや技術の進歩に伴い,社会や技術における様々な状況から,複合的な問題や課題を把握し,社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て,問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力
【出題内容】
社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象として,「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い,多様な視点からの分析によって問題解決のための手法を提示して,その遂行方策について提示できるかを問う。
【評価項目】
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,問題解決,評価,コミュニケーションの各項目
PDF資料に記載はありませんが、口頭試験では全ての項目(つまり技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)の有無)についてチェックされると思います。
上記の内容はこれまでの試験でも確認されているものではありますが、特にマネジメント、コミュニケーション、リーダーシップのようなカタカナ語ジャンルについて、明記されていることが興味深いですね。総監以外の部門でも総合技術監理のような視点が求められているように思います(しかしそうなると総監との違いが曖昧な感じになりそうですね。。。)。
とにかく平成31年度試験からすべて論文形式となる筆記試験では、
●必須科目Ⅰ(解答用紙3枚)では、「技術部門(建設環境のひとは建設部門)」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するものを『専門的学識,問題解決,評価,技術者倫理,コミュニケーション』について表現することを意識しながら記述する。
●選択科目Ⅱ-1(解答用紙たぶん1枚)「選択科目(建設環境のひとは建設環境科目)」の専門技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理等に関わる汎用的な専門知識に関するものを『専門的学識,コミュニケーション(←専門的学識だけじゃないんですね)』について表現することを意識しながら記述する。
●選択科目Ⅱ-2(解答用紙たぶん2枚)「選択科目(建設環境のひとは建設環境科目)」についての応用能力(これまでに習得した知識や経験に基づき,与えられた条件に合わせて,問題や課題を正しく認識し,必要な分析を行い,業務遂行手順や業務上留意すべき点,工夫を要する点等について説明できる能力)に関するものを『専門的学識,マネジメント,コミュニケーション,リーダーシップ』について表現することを意識しながら記述する。
●選択科目Ⅲ(解答用紙3枚)「選択科目(建設環境のひとは建設環境科目)」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するものを『専門的学識,問題解決,評価,コミュニケーション』について表現することを意識しながら記述する。
上記のこと、文章ではわかりにくいので表にしてみました。
『専門的学識』がすべての科目で問われていますね、当たり前ですね。
面白いのは『コミュニケーション』も同様にぜんぶの科目で問われています。
逆に『継続研さん』はナシ、これは主に技術士登録後のはなしだと思います。もちろん口頭試験ではその姿勢が問われます。
経験に基づいた実務の実際が試されるⅡ-2では『マネジメント』と『リーダーシップ』がここだけで問われています。
技術士の要である(と私が思っている)『問題解決』は必須科目Ⅰと選択科目Ⅲで問われています。両方とも解答用紙3枚なので、これらの問題に対してはシッカリと問題を分析したうえで、(その問題を解決するという)課題を遂行する過程を表現する解答論文を記述する必要があることがこのことからもわかります。必須科目Ⅰは部門共通の問題と課題、選択科目Ⅲは専門科目特有の問題と課題をぜひ骨子法を活用して論理的にブレのない論文を記述してください(準備してください)。
また、『技術者倫理』が必須科目Ⅰで問われています。部門共通、というかこれはもう技術者共通の倫理について問われるのだと思います。
でもまぁ皆さん1次試験、あるいはJABEE認定課程を経ているわけですからそんなにことさら意識しなくても大丈夫だと思います。
こうしてみると必須科目の出題方式及び内容にいちばん変化があったと言えますね。これまでのマークシートの択一問題とは次元が大きく異なることを自覚してください。
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