2012年7月29日日曜日

平成22年度「環境影響評価制度見直し(戦略的環境アセス)」再現答案

ご無沙汰です。
いろいろと本業のほうで忙しくなってきた上に、試験対策で有用となる情報が特にないこともあってブログからはちょっと遠ざかってました。
それでも頻繁にブログをチェックしてくださるひともいらっしゃるようですので、久しぶりに投稿します。

6月に集中的に「筆記試験突破のカギ」を連載し、4つのカギについてアレコレ書きました。
試験もあと残すところ1週間なのですが、ここでその実例としてわたしの平成22年度試験の答案を材料に解説してみます。
回答論文の内容を確認するだけで終わらせるのではなく、問題文で問われていることをシッカリ把握して、それに対してどう回答しているのかをぜひチェックしてください。
それからこれは平成22年8月に記述したものです。つまり平成23年4月の法改正前に書いたものであることにご注意ください。

恵庭の森【札幌と千歳のほぼ中間】
<問題文>
Ⅰ-2 環境影響評価制度について,環境影響評価法の施行後10年を経過し,中央環境審議会の答申「今後の環境影響評価制度の在り方について」(平成22年2月22日)がとりまとめられるなど,制度の見直しが行われている。これについて,以下の問いに答えよ。
(1)現行制度の課題と改善策(事業者としての対応が必要なもの)について,2つ挙げて説明せよ。(ただし,後述(2)戦略的環境アセスメント(SEA)を除く。)
(2)戦略的環境アセスメント(SEA)制度の導入にあたって,事業者としての課題を3つ挙げて説明し,それにどのように対応すべきか述べよ

1.現行制度見直しの背景←質問の答えをいきなりは書きにくいので、導入部をもうけると書きやすい
環境影響評価法の施行から10年が経過し、法で定められた見直し時期を迎えている。この間、事業者によって環境影響の回避、低減が行われてきた。↑これは問題文をオウム返し(+α)してるだけ
しかし、これまで現行法の、あるいは地方自治体の環境影響評価条例の施行を通じていくつかの課題が浮かび上がってきた。←ここで制度上の不具合を見直す必要性を把握していることをアピール
さらには生物多様性の保全、地球温暖化対策の推進、地方分権の推進、行政手続きのオンライン化など、社会情勢が変化してきた。←さらに社会情勢の変化に合わせた見直しの必要性を把握していることをアピール。すべて上記「答申」の内容そのままです。
2.現行制度の課題と改善策←(1)の要求事項をそのままタイトルに
上記の課題に対応するため、法制度の見直しが検討されている。以下に、現行制度の課題と改善策を2つ挙げる。←(1)の要求事項そのまま。問題文を読み違えていないことをアピールする効果がある
2.1住民説明会←2つのうちのひとつ
現行制度では住民説明会は準備書段階で開催されている。これでは住民の意見が評価項目や調査方法に反映されず、再調査や追加調査など、手戻りが生じる恐れがある。←ここまでが課題(問題点)
住民の意見を環境影響評価に反映させることが、制度の意義である。地域特性を反映した評価項目、方法とするためには、方法書段階で住民説明会を開催するべきであると考える。←これが改善策
2.2環境保全措置←2つのうちのひとつ
環境保全措置の実施状況がほとんど公表されず実際の環境配慮の効果が不明なため、他の類似事業における環境保全措置実施にあたって参考とするにはデータが不足している。←ここまでが課題(問題点)
今後のよりよい環境影響評価のためには、類似事業にも参考となるように、環境保全措置の実施状況について公表するべきであると考える。←これが改善策
3.戦略的環境アセスメント(SEA)制度の導入の背景←項目の立て方がちょっと変ですが、本番では手書きだしこんなもんです。少しくらい変でも気にしないほうがいいです
現行法では、事業計画がほぼ固まった段階から環境影響評価手続きが開始されており、環境影響の回避低減に関する内容の検討範囲が限られてしまっている。
生物多様性国家戦略において、事業の早期段階から生物多様性に配慮することが明記された。また国土交通省においては事業の計画構想段階において住民意見を反映させるため、PI手法を取り入れ、事業の早期段階で住民意見を反映させた事業が進められている。
このように、事業の計画構想段階において、生物多様性に及ぼす影響の調査、予測・評価の重要性、住民意見を取り入れる重要性が高まっている。←ここでふたたび専門知識(社会的なこと)があることをアピール。以下の3つの課題に共通した全体的な課題(問題提起)の概要説明も兼ねている
3.1戦略的環境アセスの課題←ここでは課題と解決策を分けた
SEAの実施にあたっては、複数案の比較検討が重要であり、次に示すようにSEAの課題を3つ挙げる。←(2)の要求事項そのまま。問題文を読み違えていないことをアピールする効果がある
①定性的である←3つの課題のひとつ
動植物などの生物種や生態系を評価するにあたっては、科学的知見が乏しく、定量的な評価手法が困難な場合が多いことから、定性的な評価方法となることが多く、複数案の比較検討を客観的に行うことが難しい。
②わかりにくい←3つの課題のひとつ
環境要因が複雑にからみあっており、専門家以外の一般の住民や行政には、わかりにくい。
③SEAの実施時期←3つの課題のひとつ ←これは試験中に頭が真っ白になり、無理やり書きました。複数案とは無関係。
SEAの実施後、事業アセスまで一定期間以上が経過し、SEAの評価結果が反映されない可能性がある。
③複数案(代替案)の実現性が低い ←口頭試験用に準備した論文の修正案
複数案の実現性が低いと事業計画案は限られることから、実質的に複数案とは名ばかりのものとなる。
3.2戦略的環境アセスの改善策←ここでは課題と改善策を分けて書いた
①定量的な評価手法←3つの策のひとつ
できるだけ定量的・客観的に評価する必要があることから、HSIモデルを用いたHEPなどの環境機能評価法や生物機能をモデル化した生物機能評価法などを用いるべきである。←具体策を示すことで応用能力をアピール
ただし事業者の経済的負担が大きくなることに留意する。←マイナス面を把握していることを示すことで応用能力をアピール
②環境情報マップ←3つの策のひとつ
複雑な環境要因を住民や行政などの専門外のひとにとっても理解しやすくするために、複数案のそれぞれについて、環境情報マップを作成し、比較検討を行うべきである。
具体的には、生物多様性保全の施策検討・方針決定に必要となる生態学的な要求を反映した、アセスで活用可能な精度を備えた、概ね市町村~県単位レベルの環境情報マップとする。←具体策を示すことで応用能力をアピール
③順応的対応←3つの策のひとつ  ↓このへんを書きながらもう泣きそうでした
SEAの実施時期については、事業計画の進捗状況を踏まえながら、順応的に対応するべきである。
以上
③実現性のある複数の事業計画案 ←口頭試験用に準備した論文の修正案
複数の事業計画案(代替案)それぞれ実現性の高い案とするため、専門家による客観的な評価を行う仕組み、さらには実務者の技術力を確保するための人材育成が重要である。

解説
「現行法見直し」と「戦略アセスの導入」の背景については、それぞれ9~10行程度(答案原稿用紙で)書いています。これは知識を備えていることを試験官にアピールすることのほかに、その後の「課題」に集約するように書きました。これはあらかじめ準備できると思います。

そのあとの小項目は、問題文で要求されていることを素直にそのまま項目だてして、その説明を答案原稿用紙で2~3行、文でいったら1~2文しか書いていません。
これだけの内容で、原稿用紙3枚、最終行の最終マスまで埋まりました。
答案原稿用紙3枚といっても、皆さんが普段業務でレポートを書いているMSWordなどのA4レポートだと、実は1枚半くらいにしかなりません。

ですから「原稿用紙を埋めるために文章を長々と書きつづる」というのではなく、やはり『箇条書きに近い短い文で体系的にまとめる』と、内容が濃いにもかかわらず、読みやすく、採点しやすいので、結局のところ高評価、すなわちA評価→「合格」ということになると思います。

また、戦略アセスの課題(特に複数案の比較検討にあたっての課題)について、3つめがどうしても思いつかなくて、頭が真っ白になりました。よく考えたら自分で勝手に縛っているだけです(苦笑)。
いろんなひとから話をきくと、「3つ挙げろ」と要求されているにもかかわらず、2つしか挙げないひとが結構いるらしいです。
無理やりでも3つ挙げて間違い部分については口頭試験のときに言い訳させてもらえるチャンスがあるかも、くらいに考えて、多少トンチンカンなのは承知の上で、終了間際の最後の10分でわぁーっと書きなぐりました。

というわけで、色鉛筆を準備していたのですが使うことなく終わり(※今年は黒色以外の鉛筆は禁止です)、しかもテキストではわかりやすいように各項目に下線を引いていますが、これも時間が足りなかったので本番では罫線なしです。
・・・つい話がそれました。
ここで訴えたいことは、「論文の完成度も重要ですが、それ以上に『設問にある要求事項には確実に応える』ことが最優先だ」ということです。

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