2013年5月28日火曜日

専門知識と応用能力について その2.専門知識部分の回答例

今回は、わたしの回答例をもとに試験会場での思考過程を思い起こしながら綴っていこうと思います。
それではさっそく本題に移ります。
平成22年度試験のBグループ問題です。
(専門知識は当然のこととして)応用能力にピッタリとあてはまるかはわかりませんが、少なくとも課題解決問題ではないので応用能力が試されていたのではなかったかと考えます。

Ⅰ-7 干潟・砂浜・藻場等に代表される沿岸域の保全について,以下の問いに答えよ。
(1)沿岸域の特性を踏まえて,沿岸域の保全が重要である理由を3つ述べよ。
(2)沿岸域の保全事業において,計画段階と実施段階それぞれで,留意すべき点を述べよ。

(1)はズバリ専門知識が問われています。
ここでは「沿岸域の特性」や「沿岸域の保全が重要である理由」を専門分野の基礎知識(略して専門知識)として備えている技術者かどうか、体系的に整理できているかどうか、が問われているわけです。
沿岸域が専門のひともそうでないひとも、下を読む前にご自分でもちょっと考えてみてください。
海草ウミヒルモのなかま【本部町ゴリラチョップ沖】

沿岸域を専門分野としていないひとにはピンとこないかもしれませんが、専門職として携わっている技術者であれば、試験官から問われていること、つまり答案に記述することが期待されていることが頭に浮かんでくるはずです。
わたしの場合は「沿岸域の重要な3点」ということからすぐに海岸法(の理念)についての知識が問われているんだなと思いました。
この海岸法の理念を解説するような記述をすればいいんだろう、ということで実際のわたし回答は以下の内容がコアとなっています。

①国土保全(防護)
沿岸は、我が国の国土の外郭をなし、領土・領海の基線であり、津波、高潮など海域に起因する様々な災害から国民の生命や財産を防護する。

②生物生息場・水質浄化(環境)
陸と海と大気の接点であり、潮の干満や波の作用などによって、生物にとって良好な生息環境を形成し、水質浄化など物質循環が行われている場である。

③親水(利用)
沿岸域は、レジャーやレクリエーション、伝統行事等の親水空間として利用されている。

解答記述にあたっては、(1)についての答案用紙の枚数指定はなかったので、3枚のうち1枚ちょっとくらいのボリュームをイメージしました。
上記のコアだけではボリュームが全然足りないので、そのほかの沿岸域に関する小ネタを拾い出し、それを整理してパーツを組み換え、取捨選択し、文章構成を考えてから書き始めました。

とはいっても最初は調子よく書いていたのですが、地球温暖化による海面上昇ネタを1枚目の最後らへんを書いているころに急に思い出し、このネタは重要トピックだし外せないネタだと判断、急きょあとから無理やり付け加えちゃいました。
というわけで変な文章になってしまったんです。結果的にはギリギリセーフでしたが、こういうのはあんまりよくないかもしれませんね。

実際のわたしの回答内容は以下になります。

1.沿岸域の自然環境保全の意義
 沿岸域は、砂浜、干潟、藻場、サンゴ礁など様々な生物生息環境が存在する。
 これら多様な生態系から我々人類は多大な恩恵を受けている。
 一方で、沿岸域は人口や産業の集中により過度の負荷がかかり、環境が疲弊している。陸域や沿岸域の開発の累積的な影響により、沿岸域の生態系は減少・劣化の傾向にある。このまま沿岸域の自然環境が損なわれ続けるならば、我々人類は健全なくらしを将来に渡って継続していくことが困難となる。
 以下に、沿岸域の保全が重要である3つの理由を挙げる。
①国土保全(防護)
沿岸は、我が国の国土の外郭をなし、領土・領海の基線であり、津波、高潮など海域に起因する様々な災害から国民の生命や財産を防護する。
②生物生息場・水質浄化(環境)
陸と海と大気の接点であり、潮の干満や波の作用などによって、生物にとって良好な生息環境を形成し、水質浄化など物質循環が行われている場である。
③親水(利用)
沿岸域は、レジャーやレクリエーション、伝統行事等の親水空間として利用されている。
 また、地球温暖化による気候変動の影響で、海水面が上昇することが予測され、30cmの上昇で我が国の6割の砂浜が消失する懸念もある。
 将来世代に豊かな自然環境を受け渡していくために、沿岸域の保全の強化や劣化要因の除去を積極的に講じていく必要があると考える。


これで回答用紙2枚目の4行まで費やしています。
※ちなみに今年からは全部で4枚のうち、専門知識で2枚、応用能力で2枚となる可能性があります。そう考えると1枚と4行では少ないですね。これよりももっとボリュームを増やして1枚と半分以上は埋めたいですね。すると原稿用紙換算であと24文字×12行ほど増量させたいところです。
※ただし、想像するに回答が2枚指定の場合には、問題文のほうでもっと書くべきことが指定されるような、具体的には小設問がもう1題追加されるんじゃないかと思います。

とにかくまったくのゼロから、それも制限時間内で書ききるのはほとんど無理な内容だと思いますが、あらかじめ骨子パーツとして準備しておくぶんには全然たいしたことはない内容だということがおわかりいただけると思います。

もちろん、海岸法に拘る必要はなく、「沿岸域の保全が重要である3点」を根拠とともに論理的に示すことができればOKです。
この問題の場合には海岸法の理念を土台に据えると3つのベクトルが違うというか、バランスも取れると思います。
海岸法に限らず、河川法はじめほかの法律にも同じような理念・哲学が根底にありますよね、他の分野でも同様なことがいえると思います。。

次回は応用能力について、漠然としていてよくわからないのですが考えてみたいと思います。
では!

2013年5月27日月曜日

専門知識と応用能力について その1専門知識

それではまず、午後いっぱつめの試験である①専門知識と応用能力の、まずは専門知識について、実際に過去のBグループの問題文をみてみましょう。

平成24年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕
Bグループ
Ⅰ-3 道路における環境への取組について,以下の問いに答えよ。
(1)沿道環境(大気質汚染と騒音)の近年の状況と課題について,概要を述べよ
(2)我が国において,省エネルギー化や低炭素型社会の構築が強く求められていることを踏まえ,道路において取り組むべき対策を3項目挙げて説明せよ。その際,沿道環境改善への効果もある場合にはそれにも言及せよ。

Ⅰ-4 ヒートアイランド現象について,以下の問いに答えよ。
(1)ヒートアイランド現象の緩和を図る上で,都市の緑地や緑化の果たす役割を述べよ
(2)(1)の役割を踏まえ,都市の緑地の保全と緑化を推進していくための対応策を3つ取り上げて,あなたの意見を述べよ。

Ⅰ-6 低炭素社会化の観点から,公共交通・輸送機関として鉄軌道の役割が期待されている。このことに関し,以下の問いに答えよ。
(1)CO2排出量において鉄軌道が他の輸送機関に比べ優れている理由を述べよ
(2)鉄軌道におけるCO2排出量削減の取組の内容を3つ述べよ
(3)公共交通・輸送機関として鉄軌道の利用をより促進するための取組を2つ挙げ,その推進に当たっての建設分野における課題と対応策について述べよ。

Ⅰ-9 平成20年3月「中小河川に関する河道計画の技術基準」が通知された。この中には,硫化能力を増大させるために必要な河積の拡大は,原則として川幅の拡幅により行うこと,そして,河床掘削はできるだけ避けることが示されている。そこで,以下の問いに答えよ。
(1)川幅を拡幅すること,河床掘削を避けることにより期待される河川環境に対する効果を2つ述べよ
(2)このような改修を行った際に生じる問題点を1つ挙げ,その解決方法を述べよ。

Ⅰ-10 河川水中に存在する有機物が流下に伴い減少することは“自然の浄化機構”や“自浄作用”として広く知られている。そこで,以下の問いに答えよ。
(1)河川における自然の浄化機構説明せよ
(2)河川における自然の浄化機構を高めるための方策を3つ挙げ,その内容を述べよ。

伊是名島の伊是名集落

このようにみてみると、(1)の多くが専門知識についての問いであることがわかります。
文末表現が、
○○について概要を述べよ
○○について説明せよ
○○の果たす役割を述べよ
○○である理由を述べよ
○○の取組の内容を述べよ
○○に対する効果を述べよ
となっているものがそれにあたります。

専門知識については設問で問われていることを述べる(=説明する)だけです。
知っていることを整理し、あとは淡々と記述するのみです。

ということで勝負は、
①問われている内容に関する知識について、必要レベル及び量を備えておく
②上記の知識を体系的に整理しておく
ことになると思います。

これについてはこれまでもたびたび紹介している行政発信の資料がとっても役立ちます。
各設問とも、それぞれのジャンルからホットな話題(新しい施策の実施前後、法改正前後、技術基準改訂前後、ガイドライン発行前後など)が出題される傾向があります。
そのほか建設環境の存在意義として重要なテーマである、①地球温暖化対策、②生物多様性保全、③循環型社会構築、については、ご自分の専門分野での取り組み、課題、対応策も専門知識として整理しておいてください。

次回は、わたしの実際の回答論文を例に、試験時の思考パターンを振り返ってみようと思っています。

では!

2013年5月26日日曜日

選択科目について

ご存知のとおり、平成25年度から試験方法が大きく変更されました。
選択科目は、
① 専門知識と応用能力  600 字×4枚 (2 時間)
② 課題解決能力     600 字×3枚 (2 時間)
となります。

これまで建設環境では、Aグループ(2問)とBグループ(8問)の2つからなり、各グループから1問づつの計2問を選択して、それぞれ解答用紙3枚以内で記述することが求められてきました。

各グループともに小設問が2つあることが多く、
Aグループは(1)で専門知識と課題設定・抽出能力、(2)で課題解決能力
Bグループは(1)で専門知識(あるいは課題設定・抽出能力)、(2)で課題解決能力あるいは応用能力
が問われる傾向がありました。

新しい試験方法による①専門知識と応用能力、②課題解決能力、がどのような出題になるのかはわかりませんが、試験に向けての取り組み方としてはやはり過去問を参考とするのがいちばんです。

その際、
①専門知識と応用能力は、過去のBグループ問題のうち課題解決モノではない問題
②課題解決能力は、過去のABグループの課題解決問題や過去の建設部門必須科目の環境分野の問題
が役立ちます。

次回からは実際の過去問を読み解きながら、①専門知識と応用能力について考えてみましょう。

では!
今帰仁村湧川にて

2013年5月25日土曜日

ひと月ぶりのご挨拶

ほぼひと月ぶりの投稿になります。
この間、SUKIYAKI塾沖縄でいごの会の活動としては年間でも最大のイベントである筆記試験対策セミナーがありました。
今年は4月に出願対策セミナーがあったので、実質的にほぼ2週間の準備期間となってしまいました。
会場の手配から受講生の募集、講師の配置やテキスト作成など、大慌てのテンテコマイのバッタバタのままアッという間にセミナー当日を迎えてしまいました。
それでもなんとか無事に、というか収穫の多いセミナーを開催することができたのではないかと思っています。

特に今年は試験方法が変更されることもあって、
・新しい試験方法について
・出題方式予想
・残り2ヶ月半の効率的な勉強方法
など、筆記試験までに何をどのようにすればいいのか、その道しるべを示すことができたのではないかと思います。

建設環境に限ってみると、
今年のセミナーは県外からの派遣講師のほとんどが建設環境も取得しているひとたちだったので、例年以上に多角的な視点で講義を進めることができたと考えています。
特に今年は専門科目(選択科目)の出題内容がハッキリしない暗中模索な状況ですので、これはたいへんに心強かったうえに有意義でした。

野甫港から野甫大橋【野甫島】

反省点としては、講義のなかで(じゃっかん受講生を置いてきぼりにして)講師間でちょっとした議論があったことです。
しかしそれは技術士試験が正解、あるいは正攻法がひとつだけではなくて、評価にあたっての基準があるようで実はひと(試験官)によって解釈が異なる多様な視点が内在しているんだ、ということが伝わったとしたら、それもいいんじゃないかと勝手ながら思っています。
事前に意見を統一させるのも受験生が混乱しないためには必要なのかもしれませんが、多様な価値観、判断基準があることを提示してみて、受験生自身にも考えてもらうことも大事なことなのではといまでは思っています。

とにかく自分自身で考えてみるということが実はいちばんの試験対策になるように思います。

今年から変更になった試験方法への処し方、出題様式の予想を交えた解説などを、セミナーで使用した建設環境のテキストからの抜粋、あるいはネタを追加しながら、次回から数回に分けて綴ってみたいと思います。

では!