2014年8月7日木曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅲ-2 インフラ更新と環境配慮

試験問題の最後は、インフラ更新時の環境配慮についての問題でした。

Ⅲ 次の2問題(Ⅲ-1,Ⅲ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記し,答案用紙3枚以内にまとめよ。)

 Ⅲ-2 我が国の社会資本ストックは,高度経済成長期などに集中的に整備され,今後急速に老朽化することが懸念されている。今後,真に必要な社会資本とのバランスを取りながら,如何に戦略的に維持管理・更新を行っていくかが問われている。同時に,この様な社会資本の更新の機会を捉えて,自然環境や生活環境などへの配慮の取組を実施する必要がある。このような状況を踏まえ,以下の問いに答えよ。

(1)社会資本の更新事業を1つ想定し,その概要を説明せよ。また,その更新事業を計画,実施する際に環境への配慮を図る観点から検討すべき課題を,多面的な視点から複数挙げ,その内容について述べよ

(2)上述した検討すべき課題のうち,あなたが最も重要と考えるものを1つ挙げ,その理由を説明するとともに,解決するための技術的提案を示せ

(3)あなたの技術的提案がもたらす効果を具体的に示すとともに,想定されるリスクについても記述せよ。
ボトルネックを忘れるな【那覇市栄町商店街】

総監のほうも人口減少・高齢化社会を見据えたインフラ更新計画についての問題でした。
他部門や他科目でもこのテーマで出まくっていたようですね。

昨年末(2013年12月31日)の投稿で取り上げた
「今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について」答申(本文)(PDF形式)PDF形式
で示された10の基本的な考え方の5つめに「豊かな暮らし・環境や活力のある経済社会を実現するための維持管理・更新」というのがあります。
回答論文の作成に参考となる具体的なネタはありませんが、本問題の前段と同内容の方向性が示されています。ここをもっと深堀すればよかったですね。
いずれにしてもつい総監目線で見てしまうクセが抜けきれなくって頭の整理が難しいですがⅢ-1と同様に、

(1)多面的な視点を持っていることをアピールしておく必要があります。
更新に限らずインフラ整備というものは、われわれの生活利便性や安全性の維持/向上と環境(自然環境・生活環境)保全とのトレードオフの関係にあります。
このトレードオフをイイ塩梅のバランスで配慮する方向性を記述できたらバッチリだと思います。
さらに時間軸として、現在の状況と将来予測される社会状況についても忘れずに書いてください。

(2)上記のトレードオフ課題のうち、1つを取り上げて、その取り上げた理由と、その解決策を書くわけですが、これは建設環境分野の専門技術によってイイ塩梅のバランスで配慮できる解決策がバッチリですよね。
課題は、利便性・安全性・低コストのほうを優先させるか、環境(自然・生活環境)保全を優先させるか、はたまた優劣つけずに柔軟に対応させるのかはケースバイケースですので、いずれの課題にしてもそのケースの設定(優先させる根拠)を示す必要があります。
環境配慮は、環境の保全だけでなく、失われた環境を創出(再生)という方策もあります。
昔のインフラ整備によって劣化した地域の環境を、インフラ更新時に復元する」なんてのもウケがよさそうです。

いずれにしても1つ取り上げた課題の技術的提案を書く際には、問題点の抽出を忘れずに。
ボトルネックを忘れるなです。

(3)効果の具体例は「イイ塩梅」の実例を示すところです。
想定されるリスクは、留意点ともなるわけですが、
◆◆のリスクが想定されるので、●●する際にはコレコレに留意する。
この場合のリスクというのは、イイ塩梅のバランスを崩すリスクです。
インフラ整備に注力するあまり許容できないほどの環境悪化を引き起こしてしまう、あるいは環境保全に気を使うあまり肝心のインフラの安全性が確保されないとか。。。

今年は昨年以上に燃える設問(試験官からの質問状)でしたね~
もっといっぱい書きたい気分ですが、これで筆記試験の問題文に関する投稿は終わります。

最後に、
昨年の口頭試験の様子をうかがうと、ほとんどのひとは筆記試験の内容については質問はなかったとのことですが、そうはいっても筆記試験論文の再現はしておいてください。
勉強になることこの上ないし、来年以降につづく後輩の糧になるわけですし、残念な結果になった場合にはご自分のいちばんの糧になるわけです。
そしてわたしのような添削指導するものにとっての糧にもなります。
論文の再現はぜひとも今週中には終わらせてくださいネ。

追伸
沖縄は明日からお盆が始まります。
今年は8~10日が旧盆期間で、8日はウンケー(お迎え)、翌9日がナカヌヒー(中の日)、そして最終日の10日がご先祖を送るウークイ(お送り)です。
県内各地(特に中部)ではエイサーの道ジュネーがそこかしこで盛んに行われ、石垣島ではアンガマという行事があります。

では!

2014年8月6日水曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅲ-1 防災減災と生物多様性

問題Ⅲは課題解決問題です。
1つめは防災減災対策事業における生物多様性保全への配慮、2つめはインフラ更新時の環境配慮についての問題でした。

建設環境にはなかなか絡みにくいとされていた防災減災と老朽インフラの更新ネタで来ましたね!国交省白書のテーマをそのまま放り込んできました!

いま建設部門の技術者が社会から求められている2大分野が「防災減災」と「インフラ更新」でありますけれども、それに対して建設環境の技術者としてあなたはどう取り組むべきだと考えているのか?
を試験官から問われているわけです。

●防災減災を進めながら生物多様性の保全をどのように図っていくべき?
●老朽化したインフラを適宜更新するに際して、環境への配慮はどうあるべき?

問題を読んだときは、建設部門の端くれ技術者のひとりとして、正直、武者震いしましたねえ。

回答にあたってはもちろん論理的に矛盾なく整理する冷静さがたいへん重要だとは思いますが、こういった問題に対しては(微熱程度には)情熱的な熱い技術者魂を試験官にぶつけたいところです。

1つめは「生物多様性」と絞られていますが、2つめは「自然環境や生活環境」と対象がぼかされています。もちろん2つめのインフラ更新時に生物多様性の保全に配慮するネタを展開してもいいわけです。

2014年4月14日に投稿した美しい山河を守る災害復旧基本方針【ガイドライン】、「確実に出ますよ」といろんなひとに吹聴していたわけですが、災害復旧に際して生物多様性に配慮するという具体策を防災減災対策工事やインフラ更新事業にはめかえればいいんじゃないでしょうか。

美しい山河を守る災害復旧基本方針【ガイドライン】


Ⅲ 次の2問題(Ⅲ-1,Ⅲ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記し,答案用紙3枚以内にまとめよ。)

 Ⅲ-1 大規模な津波・高潮・洪水等の自然災害に対する備えとして,事前防災・減災を推進することが必要となってきている。一方,我が国の生物多様性の損失はすべての生態系に及んでおり,今後は,自然と共生できる事前防災・減災を進めていくことが重要になると考えられる。このような状況を考慮し,以下の問いに答えよ。

(1)事前防災・減災の取り組みを進めながら生物多様性の保全を図るために検討すべき事項を多面的に記述せよ

(2)(1)の検討すべき事項からの中から,生物多様性の保全を図る上で,あなたが最も重要と考えるものを,他の事項との比較を行った上で1つ挙げ,その理由を論述せよ

(3)(2)で挙げた事項に対する技術的課題を2つ挙げ,それぞれについて,解決するための技術的提案を具体的に述べよ


【大宜味村津波】

それにしてもどちらの問題も「多面的」に記述することが求められています。
多面的ってどんな面かと戸惑うわけですが、
防災減災対策、インフラ更新ともに、われわれの生活利便性(安全性)と自然環境(生物多様性)はトレードオフの関係にあります。
ここらあたりのことに言及して、イイ塩梅のバランスで配慮する内容を記述できたらバッチリだと思います。

なお、防災減災については、生態系を基盤とした方策も注目されてきているようです。
用い方が難しいかもしれませんが、こういった方策もあるよ、と多面的に考察するネタにも利用できますね。
生態系を基盤とした防災・減災(Eco-DRR)をめぐる国際的動向

では!

2014年8月5日火曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅱ-2-2 土壌汚染対策

もうひとつの選択肢は、改正された土壌汚染対策法に関するものでした。

沖縄では米軍基地の返還に伴って、燃料からくる油ですとか、果てはカドミウム、水銀、PCB、鉛、ヒ素などの有害物質による土壌汚染が発覚することが頻繁にあります。
しかしこれは自然由来とは言えませんので、こっちの設問を選択したひとは沖縄会場にはいなかったのではいかと推察します。
わたしもハッキリ申し上げて門外漢なので、以下、問題文を転記するとともに、参考までに出題のもとになったと考えられるマニュアルへのリンクを貼っておくにとどめます。

建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル

そういえば、択一のほうでも土壌汚染対策法が出ていましたよね(問題文に記載ミスがありました)。
土壌汚染対策法は環境部門の範疇という勝手な思い込みがわたしのなかではあったのですが、建設環境もこれから要注意ジャンルとなったわけですね(わたしの認識が甘かっただけです)。

【石川県金沢市 近江町市場】

Ⅱ-2 次の2設問(Ⅱ-2-1,Ⅱ-2-2)のうち1設問を選び解答せよ。(解答設問番号を明記し,答案用紙2枚以内にまとめよ。)

 Ⅱ-2-2 公共事業の実施に当たって,自然由来の土壌汚染が確認された。当該工事における土壌汚染対策の責任者として業務を推進するに当たり,以下の問いに答えよ。

(1)想定する事業概要立地条件及び具体的な土壌汚染の内容について記せ

(2)本工事においては,近隣に処理事業者や処分場が無い。この条件下で対策を選定する手順を述べよ

(3)上記の手順で選定された措置,その選定理由及び実施上の留意事項について述べよ

次回はいよいよ選択科目Ⅲです。
では!

2014年8月4日月曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅱ-2-1 計画段階配慮書

試験が終わっての投稿第2弾。
早くもたくさんのかたが訪れてくださってますね。
マイナーと言われることもある建設環境が注目されるのは嬉しいです。

今回は「選択科目」に関する応用能力について試される選択科目Ⅱ-2です。
昨年はほとんど出題形式が同じだったので2つまとめて掲載しましたが、本年は毛色が違う2問でした。
というわけで、今回はひとつめの問題を取り上げます。

Ⅱ-2 次の2設問(Ⅱ-2-1,Ⅱ-2-2)のうち1設問を選び解答せよ。(解答設問番号を明記し,答案用紙2枚以内にまとめよ。)

 Ⅱ-2-1 山間部を事業実施想定区域とするある建設事業が計画されており,あなたは,この事業に係る計画段階配慮書手続を実施することとなった。
 建設事業及び,当該事業に関し調査,予測,評価を行う計画段階配慮事項(本設問では,事業完了後の環境影響に係る事項とする。)のうち特に重要と思われるものを1つ想定した上で,当該業務に関する以下の問いに答えよ。

(1)あなたが想定した建設事業の概要計画段階配慮事項を挙げよ

(2)建設事業の事業特性,事業実施想定区域及びその周辺の地域特性に言及しつつ,(1)で挙げた計画段階配慮事項を選定した理由を述べよ

(3)事業特性,地域特性を踏まえつつ,(1)で挙げた計画段階配慮事項に係る調査の手法について具体的に説明せよ

(4)(1)で挙げた計画段階配慮事項に係る調査,予測及び評価の結果を,それ以降の建設事業の具体化や環境影響評価手続きにどのように反映・活用するのか,反映・活用場面を1つ挙げ,その内容を概説せよ


複数案を検討した環境アセスを経た事業【那覇空港滑走路増設事業】

建設環境分野の技術者が建設事業のなかで業務上いちばん活躍するジャンルといえる、環境アセスや環境調査、環境保全措置に関する手続きや手順が昨年度に引き続き今年も問われるとは思っていましたが、昨年に改正法が施行されたばっかりの計画段階配慮書手続きについてのものでしたね!

以前より戦略的環境アセスメントに関する出題があったのでもしかしたら出るかもなと踏んでいたのですが、予想以上に具体的で詳細な要求に驚きました。
(1)~(4)まで書くべき内容が細かく指定されているので、そのまま素直に問われたことに対して返答すればいいだけですね。
どうせ回答用紙が2枚しかないので、項目だてをキッチリしていったらあまりたいそうな展開はできないわけです。
訊かれたことに答えるだけで良さそうです。
もし、すぐには書くことが思いつかなくても、強引に「わたしが想定した事業や地域ではこれが重要なんだ」という気迫で無理やり乗り切れるんじゃないでしょうか(←勝手な憶測デス)。

計画段階配慮書手続きに取り組んだ経験のあるひとはほとんどいないと思うわけですが、環境アセス(ミニアセス、自主アセス含む)や環境調査には何らかの形で携わった経験があるはずです。

①自然環境(生物多様性)、生活環境、景観、人と自然との触れ合い活動など、ご自分の得意分野(これは「専門とする事項」に記入したジャンルと合致するものが望ましいです)に関する、
②これまでに携わったあるいは経験はなくとも知識のある山間部での環境アセス(ミニアセス、自主アセス含む)を1つ取り上げて、
③事業により重大な影響を及ぼす恐れのあるネタ(山間部といえばわたしには猛禽類しか思い浮かびませんが。。。)を念頭に、
③実際に配慮したこと、あるいは配慮すべきだったと後に悔やまれたことなどをピックアップして、
④その事業が始まる前の段階(あるいは計画段階)に時間を巻き戻して、
⑤計画段階配慮書作成に係る調査等の手法(戦略的環境アセスの手法でいいです)を整理、
これはとにかく「複数案」がキーワードですよね。そのほか事業取りやめ案も複数案のひとつに入れるとか。ただし事業取りやめ案に重きを置く記述は避けましょう。書くとしても触れる程度にしておくべきです。なんといっても建設部門なので。。。
⑥反映・活用場面については、事業の計画段階でこんな配慮(複数案の検討)ができると、環境への影響を最小化、回避低減できる、とかそんなことを書けばいいんじゃないでしょうか。
これは実際の皆さんの経験で、配慮(事前に複数案の検討)をしたから環境が保全できたとか環境影響を回避・低減できたとかいうネタを(もちろん回答した想定事業に合わせて)利用すればいいと思います。
実際には配慮(事前に複数案の検討を)していなくても、配慮すればこれこれこうよかったという経験があればそれをアレンジすればいいです。
★もちろん計画段階の話なので、事業計画(範囲・位置・規模・期間・時期)が変更になるようなネタにしてください。

計画段階配慮手続に係る技術ガイド

では!

2014年8月3日日曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅱ-1

筆記試験、お疲れさまでした。
四国ではたいへんな大雨に見舞われているようですが、ここ沖縄では昨年に引き続き台風の影響もなく(数日前にかすっただけでした)、ふつうに暑いさなかで試験が実施されました(室内はもちろんクーラー完備で、今年はやや寒かったかもしれません)。

皆さん、どうだったでしょうか。

記述問題の設問内容については昨年同様に建設環境の王道を行く出題分野だったですね。
要求レベルも順当だったし、出題方法も昨年と変化はなかったので、昨年度試験を踏まえていればそこそこ準備できたのではと想像します。

今年も試験監督をしたのですが、昨年に比べて記入ミスの答案も少なく、安堵しました。
添削等で関わった受験生のひとからも連絡が入り、控えめながら自信のほどが伺える文面でしたので嬉しく思っています。
10月30日が早くも待ち遠しいですね~

まずはクールダウン【那覇市牧志公設市場】

それでは以下に、試験問題(記述もの)を振り返ってみましょう。

まず、専門知識の4つの設問から2問を選ぶスタイルでした。
  • 生物多様性の4つの危機
  • ヒートアイランド現象
  • 循環型社会
  • 下層DO
全部、建設環境の王道ネタなので、サプライズはなしですね。
特徴としては、ただ上記の内容を説明させるのではなく、それぞれ「建設分野」との絡み具合を書かせるよう仕向けていましたね。
この辺の建設分野との関係を表現できると、誰が読んでもA評価論文になると思います。

唸ったのは4番目の下層DOですね。
昨年は選択Ⅲの課題解決問題で出題された湖沼や閉鎖性水域の水質分野からの問題が、今年は選択科目Ⅱ-1で登場しました。
しかも巷でひそかに話題の下層DOが取り上げられました!
これは以前に紹介したネタ(2014年2月18日投稿)でもありましたので、それを読んでくださっていたらもしかしたらズバリ賞だったのではないでしょうか。
下層DO及び透明度の環境基準設定に向けた動き


9-11 建設環境【選択科目Ⅱ】
Ⅱ 次の2問題(Ⅱ-1,Ⅱ-2)について解答せよ。(問題ごとに答案用紙を替えること。)

Ⅱ-1 次の4設問(Ⅱ-1-1~Ⅱ-1-4)のうち2設問を選び解答せよ。(設問ごとに答案用紙を替えて解答設問番号を明記し,それぞれ1枚以内にまとめよ。)

Ⅱ-1-1 「生物多様性国家戦略2012-2020」において示されている生物多様性の4つの危機について,それぞれの危機を引き起こす要因と生物多様性への影響を説明せよ。
 また,4つの危機のうち建設分野に関係の深いものを1つ選び,先に示した危機を引き起こす要因を対象に,必要と思われる対策の概要を述べよ。

Ⅱ-1-2 ヒートアイランド現象の原因と考えられるものを3つに大別して,それらについて概説せよ。また,それぞれの原因を緩和するための建設分野における具体的対策を述べよ。

Ⅱ-1-3 平成12年に「循環型社会形成推進基本法」が公布され,社会資本整備の面からも循環型社会の構築が進められているところである。本法制定の背景を2つ述べよ。
 また,建設分野において,循環型社会の構築に重要と思われる施策とその概要を2つ述べよ

Ⅱ-1-4 湖沼や閉鎖性内湾の環境を表す指標として,下層溶存酸素量(以下,「下層DO」という。)が重要であるとの認識が高まってきている。下層DOが環境を表す指標として重要となってきた理由について述べよ。対策の原理が異なる下層DO改善に係わる対策を2つ挙げ,それぞれの対策の原理を説明せよ。

Ⅱ-2は次回とします。

では!