2022年5月26日木曜日

新たな「漁港漁場整備長期計画」

沖縄は梅雨なので毎日雨です。ここ数年、梅雨入りしたとたんに雨が降らないといういわゆる空梅雨だったのですが、今年は梅雨入りからこのかたずっと雨です。もうすぐ梅雨明けして夏本番が待ち遠しいですね(暑いのが年を経るに従いキツクなってきましたが)。

今回は取り上げるのは水産分野の話題です。
水産部門のかた向けには水産基本計画を取り上げたところですが、同様に重要な計画に「漁港漁場整備長期計画」というのがあります。こっちもちゃんと取り上げておくべきだと、いまさらながらに取り上げますね。
メインは水産土木のかたになりますが、水産資源及び水域環境を受験するひともぜひ目を通しておいてほしい計画です。
成長戦略、効率化、持続可能性、災害対策、漁村活性化、等々、重要テーマが整理されています。下記の概要だけでも把握しておいてください。
記述論文にそのまま使えますよ。ここで書かれている言い回しを使いまわすほうが、読み手(試験官)にとっても読みやすいものとなるはずです。試験官ご自身が執筆されている可能性だってあるからです。

魚供養碑
【東京都港区芝公園 増上寺】

プレスリリース

新たな「漁港漁場整備長期計画」について

令和4年3月25日
農林水産省

本日、新たな「漁港漁場整備長期計画」が閣議決定されました。

1.趣旨

  漁港漁場整備長期計画は、漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)第6条の3の規定に基づき、水産業、漁村を支える基盤である漁港や漁場の整備の総合的かつ計画的な実施に資するため、5年間を一期として策定するものです。新たな計画は、令和4年度から令和8年度までの5年間を計画期間としています。

2.新たな漁港漁場整備長期計画のポイント

  今後5年間に重点的に取り組む課題を以下の3つに明確化するとともに、目指す姿と成果目標・事業量等を設定し、計画的に漁港漁場整備事業を推進します。

(1)産地の生産力強化と輸出促進による水産業の成長産業化

ア  拠点漁港等の生産・流通機能の強化

  地域における漁港の適切な役割分担に基づき、漁港機能を再編・強化し、サプライチェーンの起点として、低コストで高付加価値の水産物を国内・海外に供給する拠点をつくる。

イ  養殖生産拠点の形成

  養殖適地の拡大、安定的な種苗の確保、養殖作業環境の改善、加工・流通の機能強化を一体的に行い、国内・海外の需要に応じた安定的な養殖生産を行う拠点をつくる。

主な成果目標

・流通拠点漁港において、総合的な衛生管理体制の下で取り扱われる水産物の取扱量の割合を45%からおおむね70%に向上させる
・漁港・漁場整備や漁港の活用を図る養殖生産拠点地域において、生産の維持・拡大によりおおむね100万トンの養殖生産を確保する    等


(2)海洋環境の変化や災害リスクへの対応力強化による持続可能な漁業生産の確保

ア  環境変化に適応した漁場生産力の強化

  海洋環境を的確に把握し、その変化に適応した持続的な漁業生産力を持つ漁場・生産体制をつくる。

イ  災害リスクへの対応力強化

  頻発化、激甚化する自然災害や切迫する大規模地震・津波に対して、しなやかで強い漁港・漁村の体制をつくる。効率的な施設の維持管理等を行い、将来にわたり漁港機能を持続的に発揮する。

主な成果目標

・水産資源の回復や生産力の向上のための漁場整備により、おおむね6.5万トンの水産物を増産させる
・流通拠点漁港において、地震・津波災害発生時における水産業の早期回復体制が構築された漁港の割合を27%からおおむね70%に向上させる    


(3)「海業(うみぎょう)」振興と多様な人材の活躍による漁村の魅力と所得の向上

ア  「海業 (うみぎょう)」による漁村の活性化

  海や漁村に関する地域資源を活かした海業(うみぎょう)等を漁港・漁村で展開し、地域のにぎわいや所得と雇用を生み出す。

イ  地域の水産業を支える多様な人材の活躍

  年齢、性別や国籍等によらず多様な人材が生き生きと活躍できる漁港・漁村の環境を整備する。

主な成果目標

・漁村の活性化により都市漁村交流人口を、おおむね200万人増加させる
・漁港における新たな「海業(うみぎょう)」等の取組をおおむね500件展開する    


<添付資料>
漁港漁場整備長期計画(令和4年度~令和8年度)(PDF : 405KB)
漁港漁場整備長期計画のポイント(令和4年度~令和8年度)(PDF : 550KB)

2022年5月17日火曜日

R4総監部門の要チェック分野まとめ(記述式)

技術士筆記試験まであと2か月となりました。早いですね。早いといえば、今度の試験ではなく令和5年度試験に向けて取り組み始めるひとからも相談を受けました。早いとはいっても令和5年度試験もあと1年しかないですからね。どちらも計画的にコツコツ進めてほしいと思います。

GW前から連載していた出題ジャンルまとめと予想ですが、最後に総監部門を取り上げます。
とはいえ総監については予想するのはあまり意味はないようなところもあり、何が出題されたとしても総監として答えるのみです。なんて言っちゃうと身も蓋もないのですが、これは真実です。
じゃあどうしてこんな記事を投稿するのかというと、それはこれまでを振り返り、今後に思いを馳せるためです。予想して、アタッタ、ハズレタと一喜一憂するためではありません(って一喜一憂しているんですが(笑))

総監技術士の相応しさとは総合技術監理を理解していること、そして実施できることであり、それを読み手である試験官に伝えることができて初めて合格することができます。
「総合技術監理」については、ご存知の通り5つの管理のそれぞれの内容を理解することももちろん重要なのですが、記述式問題で書くべき内容は、なんといっても総監キーワード集2022の1ページから4ページにある「1.総合技術監理」にある内容です。これが出題されます。そこに書かれた内容をご自分の立場や役割を設定したうえで出題されたテーマや各設問で要求されていることに沿ったかたちで表現できるかどうかが合否の分かれ目になるわけです。
「トレードオフ×優先順位=全体最適化」
一般部門はテーマの勉強が重要でしたが、総監部門の場合はテーマの勉強というよりも、総監そのものの勉強が重要なのです。
つまり、出題テーマなんてなんだっていいわけです。テーマなんかよりは問題文に合わせてしっかり書ききることができるかどうかです。それには事前にテーマが予想できるかどうかはあまり関係ないと思います。

と、これだけ書いておいてナンですが、これまでの試験テーマを振り返るとほぼそのときどきの社会問題、社会的な課題にちなんだテーマで出題されています。
わたしのイチオシは(昨年度も推してて出題されませんでしたが)脱炭素社会に向けた取り組み、になりました。カーボンニュートラルが話題にもなっていますからね。ちょっと身びいきな感覚かもしれませんが(笑)
昨年のブログからそのまま引用しますが、「2050年までの『脱炭素社会』の実現」を基本理念とする改正地球温暖化対策推進法が参議院で全会一致で可決、成立したばかりです。脱炭素社会の実現に向けて、国民、国、地方自治体などが密接に連携することが規定されています。つまりこれは決して他人ごとではないわけです。国民それぞれができることから取り組んでいかないといけないわけです。
そういうことからもこれは受験者各々の立場、組織においてどのような取り組みができるのかが問われてもおかしくありません。だいたいこれまであまり社会環境管理メインの出題ってなかったんじゃないですかね。もちろん答案のほうにはいくら脱炭素社会の構築とはいっても社会環境管理メインってわけにはいきませんから、経済性管理を中心に、人的資源管理や情報管理の管理技術を駆使して、もちろん管理間のトレードオフを調整、取組内容の優先順位を検討しながら脱炭素社会に合致した組織運営ができるよう全体最適化を図る計画を立てられるとカッコイイですね。2030年までの短・中期目標と2050年までの最終目標のそれぞれの対策について、組織一丸となって脱炭素社会に向けた取り組みをビシッと計画できるとすごくカッコイイですよね。

あるいはこれは大穴?ですが、新型コロナウイルスやらウクライナ情勢などから考えると、再びBCPが出題されるかもしれません。R2年度に出たばかりなのでアレですが、定期的に繰り返し出題されてますもんね。

タコス
【沖縄県宜野湾市】

では、これまでどんなテーマが取り上げられたのか見てみましょう。

R3
【ビッグデータ解析とかAIとかDXなど】

R2
【R1に台風や豪雨災害が頻発】

R1
【H29年12月のぞみ34号重大インシデントなど】

H30
働き方改革
【H30年6月に働き方改革関連法が成立】

H29
事業における継続可能性
【H28年12月に「SDGs実施指針」が決定、8つの優先課題と具体的施策が示された】

H28
新技術導入による変更管理
【H28年4月にi-Construction委員会から同報告書がリリース】

H27
国際イベント関連プロジェクト
【H27年6月に東京オリパラ大会特別措置法が成立】

H26
人口減少社会を見据えたインフラ更新
【H26年5月にいわゆる「増田レポート」が発表】

H25
ライフサイクルを鑑みたメンテナンス
【H24年12月に笹子トンネル事故が発生】

こうみるとやっぱり総監はほぼその前年~半年程度の期間に話題になっている事柄が出題されていますよね。
社会を揺るがす事件・事故に災害、はたまた今後の中長期にわたって社会変革を促すような施策には敏感に反応してください。そしてそういったニュースに触れるだけでなく、事業主(経営者)の立場でその影響と対応策について5つの管理と全体最適化を考えておいてください、というか考えるクセをつけてください。

まずはイキナリ回答論文を書き始めるのではなく、過去の合格答案事例集を入手してそれを研究、分析することをオススメします。
たくさんの合格論文をみるとわかると思いますが、それら受験生は専門分野(技術部門)が異なるうえに、年度によってテーマも違うわけですけれども、総監としての課題や解決策そのものにはバリエーションがないことがわかると思います。人間、やれることは決まっていますからね。
というわけで、過去問についてしっかり取り組んでおけばOKだと思います。
もちろん事前に準備することなしに、試験本番でゼロベースで課題を抽出、解決策を提示するなんてことは、あの長いようで実はとても短い試験時間にはとてもではありませんができません。しかし事前にしっかり準備しておけば、試験本番では準備していた手持ちのピースのうちどれをどのように当てはめればよいのかを問題文に照らし合わせながら決めるだけです。

わたしの講座です。課題や解決策の妥当性、論理的整合性の確認を含めて、論文の添削を受けたい方はぜひどうぞ。

2022年5月10日火曜日

グリーンインフラの取組事例が掲載された支援制度集が公表されました

GWが明け、業務に、試験勉強に、いよいよフルスロットルでしょうか?
それとも休みボケでなかなかエンジンがかからないで途方に暮れているひと、あるいは現実逃避してしまっているひともいるかもしれませんね。勉強をしないといけないことは誰よりもわかっているはずですが、机に向かっていきなり文字の羅列ばかりの試験問題文やら分厚い白書やテキストなどを手に取ってもその重みで押し潰されちゃいますよね。
そんなひとにオススメなのが、専門技術分野のちょっとした読みもの、行政発表の報道資料なんかを気軽に眺めてみることです。わたしのブログの過去記事なんかを飛ばし読みするのもオススメですよ。
とにかくどんなカタチでもいいので少しづつ社会参加してください。そしてだんだん気分を高めて、試験対策の王道である、重要テーマごとの骨子作成、過去問に対する答案論文作成、そして添削指導を受けてください。

わたしでよかったら講座を解説していますので連絡ください。
課題や解決策の妥当性、論理的整合性の確認を含めて、論文の添削を受けたい方はぜひどうぞ。

話しは変わって、今回取り上げるのは建設環境の重要テーマであるグリーンインフラです。
もちろん建設環境に限らず建設部門全般で問われていますし、インフラですから建設部門だけじゃなくて、インフラ関連部門(農業、上下水、森林、水産、環境など)すべてに関連する重要テーマです。
グリーンインフラ、実際にはどんな取り組みがあるのかを把握しておくと、多面的で多様な視点で展開できると思います。お時間あるときにパラパラ眺めてみてください。そして興味のある取組についてはさらにネットで検索するなど深堀して、ご自分の糧としてください(さも自分で担った業務かのように)。必須科目Ⅰ、選択科目ⅡやⅢの対策になりますよ。

虎ノ門ヒルズ森タワー
【東京都港区】

グリーンインフラの取組に活用可能な支援制度をとりまとめました
~「グリーンインフラ支援制度集」の公表~


令和4年4月28日

同時発表:農林水産省、環境省
 
自然環境が有する多様な機能を活用するグリーンインフラは、防災・減災、自然環境、地域振興等の多様な地域課題の同時解決を図ることができる取組として注目されています。
今回、地域での取組の検討に役立てていただくため、国土交通省、農林水産省、環境省等が協力し、その情報をとりまとめた支援制度集を作成しました。


■グリーンインフラとは 
〇グリーンインフラは、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において 、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組です。

〇本取組を官民連携・分野横断で推進するため、令和2年3月には、産官学の多様な主体が参画する「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」を設立し、グリーンインフラの社会的な普及、技術に関する調査・研究、資金調達手法の検討等を実施しています。

      【グリーンインフラ官民連携プラットフォームHP(外部リンク)】
       https://gi-platform.com/


 
■グリーンインフラ支援制度集の概要
〇これまで、様々な事業分野において、グリーンインフラの社会実装に向けた支援制度が整備されてきました。
 本支援集では、グリーンインフラの導入支援に関連して利用が想定される制度として、29件を掲載しています。

     ・国土交通省:14件      ・農林水産省    :9件
     ・環境省  :4件          ・公益財団法人等:4件
 
〇本情報は、グリーンインフラ官民連携プラットフォーム等を通じて、様々な地域主体に向けて周知します。
 引き続き、民間資金も含めた柔軟な資金調達により、地域でのグリーンインフラの取組が進む境整備を進めてまいります。

添付資料

報道発表資料(PDF形式)PDF形式

グリーンインフラ支援制度集(PDF形式)PDF形式

2022年5月9日月曜日

R4水産部門の要チェック分野まとめ(Ⅰ)

GW終わっちゃいましたね。しっかり休養&勉強できましたでしょうか。
今回は水産部門を取り上げます。
水産部門は必須科目Ⅰしか取り上げませんけれども、ともかく必須科目Ⅰ、令和元年から復活した記述式(解答用紙3枚)です。
「技術部門」全般にわたる専門知識,応用能力,問題解決能力及び課題遂行能力に関するもので,
現代社会が抱えている様々な問題について,「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から,多面的に課題を抽出して,その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う。
というやつです。

水産部門は令和以降「新たな水産基本計画」から出題されていましたがちょっと古くなってきたのか昨年度は「水産白書」から出題されました。しかし改定された最新版がこの3月に閣議決定されました。
ということで、今年度は再び「新たな水産基本計画」から出題されます!

【令和4年版 新たな水産基本計画】
水産物の持続的な発展に向けて横断的に推進すべき施策
●スマート水産技術の活用
●カーボンニュートラルへの対応
●新型コロナウイルス感染症対策
●東日本大震災からの復興
●水産物の自給率目標

昨年度試験では、スマート水産業と東日本大震災からの復興が出題されました。
そう考えると、今年度は新型コロナを除いた残り2つのカーボンニュートラル水産物の自給率になるんでしょうかね。どちらか1つは出題されると思いますよ。

とにかく水産分野の基本中の基本の計画ですからしっかり抑えてください。そのうえで余力があればR2年度とR3年度の水産白書をチェックされるとよいでしょう。
では具体的にどういったことが出題されていたのか、見てゆきましょう。

①東日本大震災からの復旧復興
②スマート水産業

東日本大震災からの復旧復興はちょうど10年が経過したタイミングでの出題でした。予想していなかったのは盲点でした。想いが足りなかったこともあるかと反省しています。
もうひとつのスマート水産業は予想していた分野だったのでよかったのですが。

R2
①新技術の活用(新たな水産基本計画から)
②地球温暖化対策

R1
①水産物の安定供給と漁村の維持発展(新たな水産基本計画から)
②SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」

H24
●水産資源の持続的利用

H23
●漁業・漁村の6次産業化

H22
●我が国の水産業の現状と課題

H21
●我が国や世界の漁業及び養殖業の現状と課題

H20
●水産物の安定供給と水産業の健全な発展

H19
●水産分野の現状と課題

平成24年度以前は水産業の現状と課題、そしてその対策で統一されていますね。
同じですね。令和元年度以降もこのテーマがずうっと根底にあります。つまり何が出題されようともコレしか出ません。
ということは試験対策も同じです。
水産分野の課題っていろいろあるようで、実は結構決まっていますよね。昨年出題されはしましたが、やはり新技術(ICT)は必須ネタです。漁業者も高齢化しているし、海外に対抗するには効率化、集約化、自動化、付加価値化するしかないですもんね。それら定番の課題を骨子などでまとめておけば、試験本番では出題テーマが何であろうともそのあらかじめ準備しておいた骨子をアレンジすることで対応できるはずです。

なお、ここで注意してほしいのですが、必須科目Ⅰは水産部門共通の問題です。問題文にもわざわざ書いてある通り「技術者としての立場で,水産部門全体にわたり広く多面的な観点から課題を抽出し」とか「技術者としての立場で,水産部門全般にわたる多面的な観点から抽出し」とあります。
課題の抽出にあたってはご自分の専門とする科目だけじゃなくてほかの科目における課題についても意識してくださいね。そうすることで高い評価が得られますし、他の受験生との差がつくはずです。
ここでおさらいですが、水産部門の専門科目は、「水産資源及び水域環境」、「水産食品及び流通」、「水産土木」の3つからなります。わたしは必須科目や選択科目Ⅲの回答の際には(問題文に数の指定がない限り)課題を3つ程度挙げることを推奨していますが、ちょうどこの3科目から課題をひとつづつ抽出すると多面的な観点がバランスよくアピールができると思います。3科目からが無理だったとしても少なくとも2科目から3つ程度抽出するようにしてください。
そのためには、いまの時期にご自分の受験する科目に関する勉強は当然のことながら、ほかの科目も意識した課題の抽出を時間をかけて整理しておくことで、試験本番では広い視野を備えた課題の抽出が瞬時にできることでしょう。その際、新たな「漁港漁場整備長期計画」も参考にしてみてください。
とにかく準備することなしに、試験本番でゼロベースで課題を抽出、解決策を提示する、なんてあの短い試験時間にできっこないです。

カモンワーフ
【山口県下関市】

わたしの講座です。課題や解決策の妥当性、論理的整合性の確認を含めて、論文の添削を受けたい方はぜひどうぞ。

2022年5月8日日曜日

R4環境部門(自然環境保全)の要チェック分野まとめ(Ⅱ-1)

今日でGWも最終日ですね。この休み期間に意識をどれだけ試験対策に割いたかで試験本番までの残りあと2か月の期間をさらに頑張れるがどうかが分かれるのだと思います。頑張ったひとはそのままその調子で、予定通りにはいかなかったひとはその気持ちをバネに盛り返して頑張ってください!

自然環境保全のⅡ-1の予想はサッパリわかりませんし、昨年度も全然当たりませんでした。。。しかし昨年の出題はあらためて眺めても渋いですねえ。そういうことから都合よく考えると、R4は順当な出題になるんじゃないでしょうか(希望的観測)。

①火山地形の国立国定公園
②世界自然遺産のOUV
③特定第二種国内希少野生動植物種
④持続可能な生物資源の管理に関する認証制度

R2
①ラムサール条約湿地とその保全措置
②環境DNA分析技術の特徴と効果、課題と展望
③野生生物の保護管理制度
④渓畔林・河畔林の特徴と機能

R1
①藻場の機能と減少要因
②愛知目標、我が国の取り組み
③森林認証制度
④自然環境保全地域と自然公園それぞれの制度

H30
①生物多様性を社会に浸透させる取り組み
②世界自然遺産地域の保護管理
③生物多様性の第2の危機
④ユネスコ世界ジオパーク

H29
①緑の国勢調査やモニタリングサイト1000
②国内希少野生動植物種と保護増殖事業
③ユネスコエコパーク
④生物多様性オフセット

H28
①鳥獣の管理(鳥獣保護管理法)
②生態系を用いた防災・減災(Eco-DRR)
③ミティゲーション
④里地里山における木質バイオマスエネルギー

H27
①自然環境保全地域
②鳥獣保護法改正と狩猟者の確保と育成
③自然公園等における利用者負担
④希少野生動植物の現況と保全

H26
①グリーン復興の取り組みと生物多様性保全への配慮
②里山の生物多様性
③自然の恵みの経済的価値評価
④自然との触れ合いのための歩道

H25
①コナラ林の適切管理
②自然解説標識
③在来生物の生息・生育域の変化
④自然再生事業におけるモニタリング及び順応的管理

でした。
当たり前ですがぜんぶ「生物多様性」ですね。さまざまな側面での生物多様性について問われています。
特に生物多様性や自然公園管理に係る法律や制度の変更時期はその話題が取り上げられることが多いようです。要チェックですね。
そういう意味では30by30をイチオシしたいと思います!
次いで話題性ということからするとアメリカザリガニ(外来種対策)あたりはいかがでしょうか。

とはいえ、出題されるネタ(テーマ)をズバリ予想するのはやっぱり困難です。
でも、何が出ようとも4つのうちから1つを答えればいいわけですから、それくらいはなんとか答えてほしいものです。それができないようでは自然環境保全の技術士に相応しいとは言えません。
なぁーんて脅すようなことを書いちゃいましたが、なにも満点じゃなくてもいいんです。6割でいいんですから、訊かれたことに対してなんかかんか回答しさえすれば合格レベルの6割には達すると思います、達するはずです。
たとえばクライアントとの打ち合わせ協議でなんかしら質問されたというシチュエーションを考えてみてください。詳しくは知らないようなことについて訊かれても専門家を自負している以上、記憶をたどりながらでもわかる範囲でなんとか答えますよね?まったく何も答えられなかった、ということはないんじゃないですか?アレと一緒です。

上記分野は傾向もヘッタクレもありません。こう言ってはミもフタもありませんが、試験に出る出ないも関係ありません。基礎の基礎、専門のなかの専門として習熟しておいてください。

知床世界遺産センター
【北海道斜里郡斜里町ウトロ】

わたしの講座です。論文の添削を受けたい方はぜひどうぞ。

2022年5月7日土曜日

R4環境部門(自然環境保全)の要チェック分野まとめ(Ⅱ-2)

それでは続きまして自然環境科目の選択Ⅱ‐2(2つの設問から1問を選ぶスタイルの応用能力問題)で出題されたネタを見てみましょう。
応用能力については「平成31(2019)年度 技術士試験の概要について 」によると次のような説明があります。
これまでに習得した知識や経験に基づき,与えられた条件に合わせて,問題や課題を正しく認識し,必要な分析を行い,業務遂行手順や業務上留意すべき点,工夫を要する点等について説明できる能力
とあります。
「選択科目」に関係する業務に関し,与えられた条件に合わせて,専門知識や実務経験に基づいて業務遂行手順が説明でき,業務上で留意すべき点や工夫を要する点等についての認識があるかどうかを問う。
ということです。
業務遂行手順、留意点や工夫を要する点、というのがキモになります。

実際の問題文をみてみると、上記の「応用能力」の説明そのままですよね。ということは今後も同じような問われ方になるんじゃないでしょうか(違っていたらゴメンナサイ)。
Ⅱ-2-X (前文に業務テーマが指定されます)~の担当責任者として業務を行うに当たり,下記の内容について記述せよ。
(1)調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順について,留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。
*あるいは(2)業務を進める手順を具体的に示し,それぞれの項目ごとに留意すべき点,工夫すべき点を述べよ。
(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

この流れ、令和元年度から3年続けて同じでしたね。令和4年度はもしかしたらじゃっかんアレンジしてくるかもしれませんが、それでも大きくは変えられないと思います。
これまでどおりの準備で大丈夫でしょう。

羽田空港にて
【東京都大田区】

それでは具体的にどういった業務の遂行手順が問われてきたのか、これまでにどんな業務が出題されたのか振り返ってみましょう。

①国立公園の歩道新設
②道路改修業務におけるロードキル対策

R2
①生態系ネットワークを踏まえた自然再生事業
②生物多様性地域戦略の改訂業務

R1
①生息域外保全計画
②自然公園における利用者負担

H30
①国立公園満喫プロジェクト(自然公園におけるインバウンド利用推進)
②生物多様性地域戦略の改訂業務

H29
①地域の自然再生事業
②生物多様性地域戦略の改訂業務

H28
①原発事故避難民の帰還にあたり利活用を前提とした自然環境の保全育成基本計画
②地域のエコツーリズム推進

H27
①河川中流域における自然環境の保全とその利活用を目的とした整備基本計画
②自然ふれあい活動計画

H26
①奥山地域における自然環境の保全育成基本計画
②自然公園における情報提供施設の改修計画と運営計画

H25
①里地里山における自然環境の保全育成基本計画
②林地を自然ふれあいの場とする基本計画

まずはなんといっても生物多様性地域戦略(の改訂)ですね。
ついで自然公園の維持管理や自然再生事業が続きます。

試験対策としては、とにかく2問のうち1つは受験要件を満たした自然環境保全分野の技術者であれば当然これまでに実績、経験を積んでいるはずのものが出題されます。直接の経験がなくとも間接的にでも関わっているはずですし、なんなら耳学問でも体に入っているはずです。とにかくこの分野の技術士を目指すのであれば当然身につけておくべき応用能力です。

R4の試験対策としては、
①生物多様性地域戦略の改訂業務の流れ
②自然公園における維持管理計画
③自然再生事業の流れ
④自然環境の利活用計画
などを整理しておけばOKじゃないでしょうか。

とにかく、
Ⅱ‐2の回答については、APECさんは「業務計画書を作る感覚で」としています。特記仕様書兼作成手順書(問題文です)に沿って業務計画書(回答論文です)を作成するように書き上げればいいと思います。

わたしの講座です。論文の添削を受けたい方はぜひどうぞ。

2022年5月6日金曜日

R4環境部門(自然環境保全)の要チェック分野まとめ(Ⅲ)

GWも終盤にさしかかり、そろそろUターンラッシュでしょうか。仕事に試験にいよいよ頭も気持ちも切り替えていかないといけませんね(自分に言い聞かせています)。

というわけでさっそく試験対策のほうに参りましょう。今回は環境部門自然環境保全の選択科目Ⅲです。
選択科目Ⅲは「社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象」に出題されます。
では具体的にどういったことが出題されていたのか見ていきましょう。

①カワウ被害防止特定計画
②国際的な地域登録制度を活用した地域振興計画

R2
①事業者による生物多様性保全
②高山植物の衰退

R1
①地域のエコツーリズム推進
②生物多様性地域戦略

H30
①再生可能エネルギー導入
②侵略的外来種対策

H29
①世界自然遺産登録地
②自然公園におけるユニバーサルデザイン

H28
①生物多様性地域戦略
②自然公園の利用促進と保護

H27
①里地里山における生物多様性
②外来生物対策

H26
①多様な主体による協働
②絶滅危惧種の保全策

H25
①生物多様性国家戦略
②再生可能エネルギー

R3はカワウが出ましたよね。いまさらながらに驚きました。
ただもうひとつのほうは自然公園系でしたもんね。
というわけで、出題ジャンルの傾向は変わっていません。
自然環境保全なので、
1に生物多様性
2に自然公園
これに尽きます。
生物多様性についてはさまざまなシチュエーションが年度によって変化しているだけです。
なお時折問われる再生可能エネルギーについては、もちろん自然環境保全の技術士として回答するわけですから、当然「生物多様性」や「景観」の保全という観点からの課題と解決策を展開してくださいね。環境部門共通の必須科目Ⅰとは違う意識で書かないと痛い目に合うかもしれません(合わないかもしれませんが)。

わたしの予想(というか希望)は、昨年と同じですが、奄美沖縄が世界自然遺産として登録されましたので、ここはぜひ(奄美沖縄に限らず)世界自然遺産地の維持管理について問われたら嬉しいですね。
あとは、設問に限らず推していますが、やっぱり外来種対策ですかね。ここ半年というものアメリカザリガニの話題が頻繁にありました。
それから(これまた昨年と同じネタになりますが)R2年の環境白書は「気候変動×防災」がテーマでしたので、ここは満を持して生態系を活用した防災減災(Eco-DRR)が出題されてもいいんじゃないでしょうか。

屋久島国立公園
世界自然遺産 屋久島

とにかく基本的なことですから(そして選択科目Ⅱ-1、Ⅱ-2対策にもなりますので)、生物多様性国家戦略、生物多様性地域戦略、外来種対策、自然公園(国立公園)・世界自然遺産登録地・ラムサール条約湿地等の維持管理、についてはしっかり整理、理解したうえで試験に臨んでください

わたしの講座です。論文の添削を受けたい方はぜひどうぞ。

2022年5月5日木曜日

R4環境部門の要チェック分野まとめ(Ⅰ)

沖縄地方、梅雨入りしました!
沖縄に限らずなんだか今年はちょっと暦が早いですね。実はいま北海道に滞在しているのですが桜の開花(というか葉桜化)も心なしか早いです。桜はちょっと逃しましたが、ゴールデンカムイが完結したタイミングで北海道は函館にやってくることができました。いやぁ感慨深いですねぇ。函館駅や五稜郭だけじゃなくて、北方民族資料館にも行ってしまいましたよ!

前回まではこのブログのメイン科目である建設部門の建設環境向けでしたが、今回は環境部門自然環境保全の出題ジャンル予想をまとめた要チェック分野まとめ、まずは環境部門共通の必須科目Ⅰ、記述式(解答用紙3枚)です。
必須科目Ⅰでは下記について問われます。
「技術部門」全般にわたる専門知識,応用能力,問題解決能力及び課題遂行能力に関するもので,現代社会が抱えている様々な問題について,「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から,多面的に課題を抽出して,その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う。

環境部門はハッキリ言って「第5次環境基本計画」から出題されます。これに尽きます。
令和2年度試験でそのものズバリ出題されましたが、今後も手を変え品を変え出題されるはずです。
第5次環境基本計画の「我が国が抱える環境・経済・社会の課題」と、それを踏まえて「環境・経済・社会の統合的向上」に向けた方策を論理的にまとめることができたらバッチリです!
ぜひ「6つの重点戦略」のひとつひとつを進めるうえでの課題とその解決策を骨子などで整理しておいてください。
そしてその肉付けにあたって環境白書だとか環境省から報道発表される環境分野の施策に関する資料などを参考にしてください。

では具体的にこれまでどういったことが出題されていたのか見てゆきましょう。

①環境保全と両立した再生可能エネルギー
②地球規模での環境危機

R2
①重点戦略(第5次環境基本計画から)
②地域循環共生圏

R1
①持続可能な社会への転換に必要となるイノベーション
②環境分野とかかわりが深いSDGs5つのゴール

H24
●今後の環境政策のあり方(第4次環境基本計画から)

H23
●グリーンイノベーション、3つの社会(低炭素社会・循環型社会・自然共生社会)

H22
●環境先進国HERB(第3次環境基本計画から)

H21
●持続可能な社会(第3次環境基本計画から)

H20
●持続可能な社会(第3次環境基本計画から)

H19
●持続可能な社会(第3次環境基本計画から)

最新の環境基本計画からしか出ていないといっても過言ではないですよね。しかも平成19~21年度は全く同じような内容で出題されています。
つまり、令和4年度試験も「持続可能な社会を実現するための課題とその解決策」を「第5次環境基本計画」を踏まえた内容で展開できればOKです。ただ、ここ数年の環境分野の動きも踏まえる必要がありますよね。SDGsを筆頭に、海洋プラスチック汚染なんかも要注目です。
とはいえやっぱりなんといっても「脱炭素」ですよね。
昨年度も再生可能エネルギーということで絡んでいますが、別の側面からの課題が出題されると思います。「脱炭素」絶対出ますから、守備範囲を広くとって、なんでも来いの姿勢で臨んでください。それには脱炭素ポータルが手っ取り早いです。ぜひチェックしてください!

五稜郭タワーから
【北海道函館市】

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2022年5月4日水曜日

令和4年度技術士第2次試験 要チェック分野まとめ(Ⅰ)

GWも折り返しに入りました。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。コロナ禍ではありますが、これまで2年間にも渡ってほぼ自粛していたぶん、海に、山に、知らない街に繰り出して人間らしい活動をされているひとも多いことと思います。そんななかでも隙間時間を作って机に向かっているひともいらっしゃることでしょう。頑張ってください!

そんなかたに参考になればと、出題ジャンル予想をまとめた要チェック分野まとめ、最後に必須科目Ⅰ、令和元年から復活した記述式(解答用紙3枚)です。
「技術部門」全般にわたる専門知識,応用能力,問題解決能力及び課題遂行能力に関するもので,
現代社会が抱えている様々な問題について,「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から,多面的に課題を抽出して,その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う。
とのことです。
部門共通というところがミソですね。
建設環境は建設部門ですので、いまいちど建設部門なのだと認識してください。暗示にかけてもいいです。
とにかく環境系のひとは「建設部門だ」という意識がたいへん低いです。

平成30年度以前はマークシートだったわけで近年の傾向もなにもないのですが、平成24年度試験以前のⅡ-1&2の出題テーマは参考になると思います。
では具体的にどういったことが出題されていたのか、見てゆきましょう。

①廃棄物
②風水害

①担い手確保
②戦略的なメンテナンス

①生産性向上
②国土強靭化

①防災・減災に向けた社会基盤の整備
②地球環境問題3つの視点

H23
①今後の社会資本整備
②建設産業の活力回復

H22
①防災・減災対策
②海外での社会資本整備

H21
①低炭素社会の実現
②高度化細分化した技術

H20
①アセットマネジメント
②技術力の維持・向上

H19
①地域活性化
②大量退職に伴う技術継承

こうしてみると「●●における社会資本整備のあり方」を問う問題ばかりですね。
●●には、限られた予算、人口減少、労働人口減少、少子高齢化、グローバル社会、激甚化する災害、インフラ老朽化、環境保全、ICTといったあたりになろうかと思います。
これすべて「国土のグランドデザイン2050」から取っています。

令和3年度は廃棄物(循環型社会構築)と風水害(防災減災)でした。どちらも建設部門の大テーマなので例年通りの想定内だったといえると思います。令和元年度、令和2年度とも上記「国土のグランドデザイン2050」で取り上げられている王道テーマでした。今年度もこの傾向が続くと思います。へんに捻らず王道テーマで多面的な課題を抽出してそれを解決する骨子を作成しておけばOKだと思います。

まずは令和3年版国土交通白書2021はあらためて目を通しておいてください。キーワードや課題を拾うくらいだったら概要版でも結構です。
その令和3年の白書といえば「危機を乗り越え豊かな未来へ」がサブテーマでした。

現在我が国が直面する2つの危機
(1)新型コロナウイルス感染症
(2)災害の激甚化・頻発化
により加速化した変化及び顕在化した「課題」について、次の5つの観点
①社会の存続基盤の維持困難化
②災害リスクの増大や老朽化インフラの増大
③多様化を支える社会への変革の遅れ
④デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れと成長の停滞
⑤地球温暖化の進行
で分析・整理されています。
多面的な課題と課題に対する取り組みの方向性まで示されています。これに沿ったはなしを書けば無難にA評価ではないでしょうか。

とまぁなんだかんだ書きましたが、やはり目玉としては「脱炭素」ですかね。
2030年目標を達成するためには建設分野としてどんな課題があってそれをどう解決すればよいか、ということが出題されると思いますよ。
そして次点としては「DX」ですかね。
この2つのうちの1つは出題されるんじゃないかと踏んでいます。

池間大橋
【沖縄県宮古島市】

いずれにしろ、選択科目Ⅲと同様、なにがテーマとなっても建設部門の技術者としての対応はそんなにはバリエーションはないと思います(解答ネタ、解答パターンとして)。
あらかじめ上記のテーマごとに骨子を整理しておけば試験当日は出題テーマに合わせてアレンジする程度で対応できると思います。

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2022年5月3日火曜日

令和4年度技術士第2次試験 要チェック分野まとめ(Ⅲ)

それではまずは選択科目Ⅲからいきましょう。
選択科目Ⅲは「社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象」に出題されました。
では具体的にどういったことが出題されていたのか、見ていきましょう。

①生態系ネットワーク
②低炭素型・脱炭素型まちづくり

R2

①生物多様性保全再生
②都市と緑・農が共生するまちづくり

H30

H29

H28

H27

H26

H25

対象とするインフラ整備のステージが防災減災、施設更新、災害復旧ものに分かれています。また、都市計画(持続可能性や地球温暖化対策)もよく問われ、たまに水質改善、再生可能エネルギー、建設副産物等々となっています。
R3の生態系ネットワークや低炭素都市づくりは過去にも出題されているものでした。とすると、だいたい出題ジャンルとしては飽和に達しているようですね。H25年度以降のジャンルを網羅しておけば大丈夫ではないでしょうか。もちろん、それぞれ最新の施策等を踏まえて解答すべきですので過去問(の合格論文)そのままではなく多少のアレンジは必要です。

いずれも建設部門共通の社会的課題について建設環境の技術者としてどのようにアプローチするか(課題を抽出してそれをどのように解決を図るのか)が問われています。

こうしてみても、白書で取り上げられるような建設部門共通の社会的課題に対して、自然環境保全や持続可能性(SDGs)との両立を踏まえた「建設環境の技術者として」の取り組みを書けるかどうかになるのではないでしょうか。

【沖縄県島尻郡伊是名島】

建設部門の共通課題(国土のグランドデザイン2050)としては、これまでにも出題されているものも含めて
①人口減少社会(H27・H30・R1)
②少子化・高齢化社会(H27・H30・R1)
③防災減災(H26・H28・H30)
④インフラ更新(H26)
⑤災害復興(や東京オリンピック)に向けての建設ラッシュ(H27・H28)
⑥気候変動適応策と緩和策(H28)
⑦持続可能な都市づくり(H25・H27 ・H30・R1・R2・R3)
⑧観光立国
⑨建設産業の活性化・技術継承
⑩建設事業の海外展開
⑪生産性の向上~i-Construction
があります。

SDGsの17のゴールで考えると、以下に分類されます。
●SDGsの17ゴールに向けた建設分野での取組
目標6:安全な水とトイレを世界中に(H25)
目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに(H29)
目標11:住み続けられるまちづくりを(H25・H27 ・H30・R1・R2・R3)
目標12:つくる責任 つかう責任(H27)
目標13:気候変動に具体的な対策を(H25・H28・R3)
目標14:海の豊かさを守ろう(H25・H26・H28・H30・R1・R3)
目標15:陸の豊かさも守ろう(H26・H28・H29・H30・R1・R3)
こうしてみても目標11、14、15は頻出ですね。昨年度は2問ともここから出題されました。⑫SDGsの17ゴールに向けた建設分野での取組(←曖昧でスミマセン(笑)。出るに決まっていますね)。

上記の7つの目標別に骨子をまとめておけばどんな問題(テーマ)が出題されようともバッチリだと思います。

環境改善ものとしては、生物多様性についてはR1に出題されましたが、今年度はそれ以外のジャンルで出題されるかもしれません。水質のほかにも底質(水質みたいなものですが)はどうでしょう。
⑬閉鎖性水域の水質改善

たくさん挙げたわりには曖昧なままですが、なにがテーマとなっても建設環境の技術者としての対応はそんなにはバリエーションはないと思います(解答ネタ、解答パターンとして)。
要はどんなテーマであっても環境負荷低減を図ることでボトルネックを解決解消し、課題を解決、達成するということです。あるいはボトルネックを解決解消して課題問題である環境負荷低減を図るということです。この軸さえブレなければ大丈夫です。
この際、カギとなるのが「ボトルネックの抽出」になります。
ここでご自分の解決策を展開しやすいボトルネックを抽出できるかどうかで、あの短い限られた時間で回答論文を書ききることができるかどうかが決まるのではないでしょうか。
頑張ってください!
*ボトルネックとは、課題の達成を阻む問題点のことで、近年の問題文では「技術的課題」とも。

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2022年5月2日月曜日

令和4年度技術士第2次試験 要チェック分野まとめの前に(Ⅰ&Ⅲ)

つづきまして、2つの設問から1問を選ぶスタイルの「問題解決能力及び課題遂行能力」が問われる必須科目Ⅰと選択科目Ⅲです。
毎年のことですが、出題予想のまえにまずは問題解決能力及び課題遂行能力の振り返りです(笑)。振り返りというか完全に過去の投稿のコピペです(笑)。でも、とても大事なことなので繰り返しアップします!

問題解決能力及び課題遂行能力とはなんでしょうか。
「平成31(2019)年度 技術士試験の概要について」によると、「社会的なニーズや技術の進歩に伴い,社会や技術における様々な状況から,複合的な問題や課題を把握し,社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て,問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力」とあります。
その出題内容は、
必須科目Ⅰが
・現代社会が抱えている様々な問題について,「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から,多面的に課題を抽出して,その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う。
選択科目Ⅲが
・社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象として,「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い,多様な視点からの分析によって問題解決のための手法を提示して,その遂行方策について提示できるかを問う。
ということです。

論理的、ということですから、これは従来から確認されている技術士の資質である論理的考察ができるかどうか、そしてそれを試験官に伝えることができるか、がキモです。
これには骨子(表)で整理して記述するクセを身につけると、書き間違うことはありません。骨子(表)についてはこれまでにも何回か記述していますし、SUKIYAKI塾のHPにも詳しいのでそちらをご確認ください。

問題文の構成は必須科目Ⅰ、選択科目Ⅲともほぼ同じなのですが、問い方(というか文言)が微妙に変化しているのが興味深いです。こうして並べてみると、だんだん文章が長くなっていますね。
R1は(1)~課題を抽出し分析せよ。
R2は(1)~課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
となってましたが、
R3は(1)~課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
となりました。
意味合いは同じだと思いますが、試験官が答案に書いてほしいことをちゃんと誤解なく説明するよう努めたら問題文の文章がだんだん長くなってしまったのかもしれません。
そういうことを鑑みると、R4はもっと長くなっているかもしれません(笑)

そして(2)は同じで
(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

次の(3)もR2からは変更なく、
(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と,新たな懸案事項への対応策を示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
でした。

そして(4)も同じで
(1)~(3)の業務遂行に当たり,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から必要となる要件,留意点を述べよ。
といったように、技術者倫理と社会の持続可能性についてのものでした。

そしてR1の試験では、
答案用紙3枚以内にまとめよ。
だったのがR2以降、
答案用紙3枚を用いてまとめよ。
となっています。いくら内容がよくても2枚ではダメかもしれませんね。

選択科目Ⅲは、R1、R2とほぼ同じでした。
ただしR3は「建設環境の技術者として」という指定がありました。受験科目の技術者として答えるべきなのは当然のことですが、わざわざ指定されていることは注意してほしいところです。建設環境は建設環境以外の技術士のひとが2科目めにチャレンジするパターンも多いですよね。建設環境は出題ジャンルが広いので、ついつい建設環境じゃない視点でも書けてしまいますから、そういった2科目めで受験するひとは要注意です。
Ⅲ-X (前文にテーマが示され)~することが求められている。このような状況を踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)~を行うに当たって,多面的な観点から課題を3点抽出し,その内容を観点とともに示せ。
あるいは
(1)~の課題を,技術者として多面的な観点から3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する建設分野における解決策を複数示せ。
あるいは
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に共通して生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
あるいは
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

選択科目Ⅲでは必須科目Ⅰの(4)技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点がないだけで、あとは同じですね。必須科目Ⅰは建設部門の技術者としての視点で、選択科目Ⅲでは建設環境の技術者としての視点で記述してください。

この流れ、平成時代の過去問に取り組む場合も令和時代用にアレンジする際に参考にしてください。もしかしたらR4年度は変えてくるかもしれませんが、それでも上記を整理して準備しておけば大丈夫でしょう。

平久保崎からの眺め
【沖縄県石垣市】

評価にあたっては、課題を課題たらしめている根本の要因を炙り出せるか(これが課題分析)、それを文章で表現できるか、にかかっています。
実はこれができているかどうかでほぼ合否が分かれるといっても過言ではありません。わたしが行っている添削講座でもほぼこの課題の分析(問題点の抽出)についての指導になっています。逆に考えると、提案する解決策のそもそもの理由・根拠なんですが、それだけ皆さんが苦手としている部分です。ここをクリアすると一足お先に「合格」することができます。

また、多面的に課題を抽出、多様な視点からの分析も重要です。
一面的でなく多面的な視点が求められています。よく受講生から多面的(多様)な視点とはどういったものなのでしょうか、という質問を受けますが、定義はないので多面的でさえあれば試験としてはOKです。ここでは課題を幅広い視点(多様な視点)でもって抽出していることをアピールしてください。
手っ取り早く把握するには、過去の合格論文を参考にするとよいでしょう。多くの合格者がさまざまな課題を挙げているのがわかりますが、ほぼ共通したネタに収れんしているということもわかり、多面的なネタ集めとしてもとても参考になると思います。
なお、多面的とはいえ、たくさん書きすぎてもしょうがないので、数の指定がなければ3つくらいにまとめるのが無難です。

必須科目Ⅰと選択科目Ⅲにおける対象分野の傾向と予想はまた次回に。

わたしの講座です。論文の添削を受けたい方はぜひどうぞ。

2022年5月1日日曜日

令和4年度技術士第2次試験 要チェック分野まとめ(Ⅱ-2)

早いもので今日から5月です。
それにしても結局のところ、コロナは落ち着くことなく社会一般化した感じですね。近くにコロナ患者を専門的に受け入れている病院があるのですが、4月中旬頃から再び救急車が頻繁に行きかうようになりました。世間の慣れと、夜中のサイレンとのギャップを感じながら夜を過ごしています。ウクライナのこともあるし、なんだか落ち着かないですね。

前回から引き続き筆記試験問題の出題ジャンル予想です。
選択科目Ⅱ‐2(2つの設問から1問を選ぶスタイルの応用能力問題)の過去問で出題されたネタを見てみましょう。
応用能力とは何ぞや、というところですが、「平成31(2019)年度 技術士試験の概要について 」によると、
これまでに習得した知識や経験に基づき,与えられた条件に合わせて,問題や課題を正しく認識し,必要な分析を行い,業務遂行手順や業務上留意すべき点,工夫を要する点等について説明できる能力
とあります。
「選択科目」に関係する業務に関し,与えられた条件に合わせて,専門知識や実務経験に基づいて業務遂行手順が説明でき,業務上で留意すべき点や工夫を要する点等についての認識があるかどうかを問う。
ということです。
業務遂行手順、留意点や工夫を要する点、というのがキモになります。

実際の問題文をみてみると一目瞭然ですが、全部門、全科目ともテーマが異なるだけで問われ方は同じでした。
Ⅱ-2-X (前文に業務テーマが指定されます)~の担当責任者として業務を行うに当たり,下記の内容について記述せよ。
(1)~に関して調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順について,留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

令和元年度から3年続けて同じでしたから、今後も変わらないと思います。もしかしたら令和4年度はじゃっかんアレンジしてくるかもしれませんが、それでも大きくは変えられないと思います。
これまでどおりの準備で大丈夫でしょう。

【沖縄県島尻郡渡名喜島】

それでは具体的にどういった業務の遂行手順が問われてきたのか、これまでにどんな業務が出題されたのか振り返ってみましょう。
R3

R2

R1

H30

H29

H28

H27

H26

①希少種への影響予測と環境保全措置
②生活環境への影響予測と環境保全措置

これはもうなんといっても環境アセスですね。環境影響評価法に基づく手続きはもちろん、法アセスに満たない規模も含んだ建設事業にかかる環境配慮(環境負荷低減)に関する手続きが問われています。そしてそのなかで環境保全措置についてよく問われています。
これは受験要件を満たした建設環境分野の技術者であれば当然これまでに実績、経験を積んでいるはずです。
建設環境の技術者は大きく、自然環境系、生活環境系、環境影響評価系に大まかに分けられますが、いずれの技術者でも回答できるはずの出題内容となっています。

令和4年度の試験対策としては、
(1)まず法アセスの手続きの流れをしっかり頭に叩き込むこと
(2)ご自分が経験した(あるいは資料が入手可能な)環境アセスの一連の流れ(計画段階から環境保全措置まで)とその内容を概略で結構ですのでチェックしておく

そのほか、
(3)建設事業による環境負荷を低減する技術(つまり環境保全措置)について、その実施手順と留意点を整理しておく
(4)さらに事業の前提条件として「第1種事業」であることがたびたび出題されています。仮に事業規模が指定されていなかったとしても第1種事業で記述してもOKなのですから(たぶん)、この機会に第1種事業の規模は抑えておきましょう。特にご自分が取り上げる予定の事業においては、しっかりと数字(kmだとかhaだとか車線数だとか)を頭に入れておいてください(覚えやすい数字になっています)。なお高速道路建設事業は規模指定がないのでイイかもしれません。

もういっこの「建設事業に係る環境保全措置」のほうは、何が出るのかわかりませんね。毎回、これが楽しみでもあります(笑)
一昨年の災害復旧(「美しい山河を守る災害復旧基本方針」ガイドライン)はズバリ的中!したのでとてもキモチよかったです(笑)。逆に昨年度の地盤汚染はサッパリわかりませんでした。
令和4年度の予想としては、ここでグリーンインフラ計画が出題されると面白いですね。国土交通グリーンチャレンジも打ち出されています。防災減災に加えて、都市の緑空間の保全・活用によって潤いのある豊かなまちづくりというのもグリーンインフラと言えますし、受験者の職種を問わないので出題しやすいと思います。
あとはH27にも出ましたが、やっぱり外来種対策でしょうか。

とにかく、
Ⅱ‐2の回答については、APECさんは「業務計画書を作る感覚で」としています。特記仕様書兼作成手順書(問題文です)に沿って業務計画書(回答論文です)を作成するように書き上げればいいと思います。

わたしの講座です。論文の添削を受けたい方はぜひどうぞ。