2020年11月9日月曜日

グリーンインフラを活用した 国土形成により‟いのちまち”を創る

先週末はWEB開催されたGIJ2020(グリーンインフラ・ネットワーク・ジャパン全国大会)に参加しました。

グリーンインフラは環境分野の要注目分野・概念であることは認識していましたが、予想以上の発表人数に驚きました。多様な立場から、そして若い人の参加が目立ち、とても熱い活発な議論に刺激を受けました。

内容が濃すぎてすべてはご紹介できませんが、いま国会でもたいへんに話題(というか紛糾している)日本学術会議もグリーンインフラに関する提言を去った8月にしていたとのことで、この日本学術会議による提言を今回は取り上げます。


”いのちまち”というのは初めて聞きました。
いのちまちとは「(略)リスクを最小化する基盤を備え、逞しく回復していく力を有する地域」とのことだそうです。
GI全国大会の多くの発表でも自然のもつ「レジリエンス」を災害対策に活かそうという話が多かったですが、生態系のもつ回復力、復元力というのが注目、そして期待されているのでしょうね。

大手町タワー・大手町の森
【東京都千代田区大手町】

提言「気候変動に伴い激甚化する災害に対しグリーンインフラを活用した国土形成により“いのちまち”を創る」のポイント

1 現状及び問題点

 近年、世界的に水・土砂災害の激甚化が際立つようになり、それを引き起こしている外力の増加は気候変動による可能性が高い。日本においても、2018年6~7月にかけての西日本豪雨、2019年10月の台風19号により、中部・関東・東北地方の各地では、観測史上1位の降水量が記録された。大河川である多摩川は一部で氾濫したが、利根川・荒川では、破堤・浸水などの大災害を免れ、首都機能が危機に陥る危険性は、辛うじて回避された。この理由は、1947年のカスリーン台風、及び1958年の狩野川台風の大被害を受けて、首都圏では70年間に渡り、山間地の貯水池、平地の遊水地・調節池・地下放水路、堤防等の社会資本整備が営々として行われきたことが大きい。
 一方で、我が国は、急速な人口減少社会に突入しているなかで、東京一極集中は依然として進展しており、感染症リスクの拡大、高密市街地における巨大地震等の重大な危機に直面している。持続可能な人間居住の実現のためには、安全・安心でレジリエント(回復力のある)な地域形成は最も基本とすべきものである。しかしながら、人口減少、国家財政等の社会的状況の変化を鑑みるとき、従来のような社会資本整備は、時間的にも資金的にも、また合意形成観点からも、困難な時代に突入していると判断せざるを得ない。
 我が国の国土計画は、1950年に制定された「国土総合開発法」に基づき、「全国総合開発計画」が5次に渡って策定されてきた。「地域間の均衡ある発展」をめざし、「定住圏構想」(1977年・第3次全総)、「多極分散型国土の構築」(1987年・第4次全総)、「国土のグランドデザイン」(1998年・第5次全総)が策定され、2014年には「国土のグランドデザイン2050」が提示され、「コンパクト+ネットワーク」の方針が示された。小さな拠点をコンパクトにつくり、ネットワーク化による国土形成を目標とするが、同時に6,000万人のスーパー・メガリージョンを創り出すとしている。
 この考え方は、以下の本質的問題を内包している。ネットワーク化成立の要件は、拠点の持続性と代替可能性、リスクを最小化する基盤とレジリエンスを内蔵していることにあるが、巨大都市圏の代替は短期に実現することは不可能である。特に、気候変動に伴う巨大災害と感染症の脅威に対して、具体的方法論とインフラ構築の道筋が示されていないことは、国民の命を守る上で重要な問題である。このような現状と問題を踏まえて、日本学術会議環境学委員会都市と自然と環境分科会は、「グリーンインフラを活用した国土形成を行うべきである」との提言を発するものである。
 グリーンインフラとは、「自然環境を生かし、地域固有の歴史・文化、生物多様性を踏まえ、安全・安心でレジリエントなまちの形成と地球環境の持続的維持、人々の命の尊厳を守るために、戦略的計画に基づき構築される社会的共通資本である」。

2 提言の内容

  • (1) グリーンインフラを活用した「いのちまち」を創る
     「いのちまち」とは、「人びとが、美しく豊かな自然環境のなかで、安全・安心な暮らしと経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、災害の脅威や危機に対して、リスクを最小化する基盤を備え、逞しく回復していく力を有する地域」を意味する。
     複合災害(自然災害・感染症)のリスクが高まるなかで、国(国土交通省・環境省・農林水産省)は、様々な自治体と連携し、グリーンインフラを活用して「いのちまち」を創り、持続可能な開発目標・SDGsの達成を目指すべきである。その整備にあたっては、情報基盤の構築、気候変動予測のダウンスケーリング、リモートセンシング技術開発等を行い、技術革新の基盤をつくり、気候変動適応策の形成に向けた具体的手法を開発すべきである。

  • (2) 「首都圏グリーンインフラ戦略計画」を創る
     感染症の拡大が重大な社会的脅威となっている中で、首都直下地震が30年以内に起こる確率は70%程と予測されており、加えて台風・豪雨・高潮が重なる複合災害が生じる可能性を否定することはできない。首都圏の脆弱性は、高密居住、海抜ゼロメートル地帯の高潮被害、都市型水害、森林地帯の土砂・流木災害等全域に及んでいる。首都圏の人口は約4,430万人であり、壊滅的被害を受けることは日本の浮沈にかかわる事態となる。国は自治体と連携し、新しい生活様式の基盤となる「首都圏グリーンインフラ戦略計画」と、これを踏まえた「行動計画」を速やかに策定すべきである。

  • (3) 沿岸低平地に「多重防御グリーンインフラ」を創る
     急激な人口減少に直面している日本の沿岸低平地に、地震・津波・高潮・台風等の巨大災害にレジリエントに対応しうる「多重防御グリーンインフラ」の構築が必要である。これは沿岸域の自然立地を活用し安全・安心な地域形成を目指すものであり、生態系の特質を踏まえた「天然更新を活かした海岸林」を形成していくことが重要である。これに基づき、国、自治体は国土管理の基盤を形成し、国際社会に貢献していくべきである。

     提言全文はこちら(PDF形式:3,056KB)PDF

2020年10月24日土曜日

2050年を展望した国土の方向性と課題

すっかり秋ですね。
わたしの業務も先日ようやく”夏季”調査が終わりまして(ギリギリセーフ?で)ホッとしているところです。
そして筆記試験からひと月が経過し、皆さん試験のことは脇に置いて日々を過ごされていることと思います。現にブログの訪問者数もすごく少なくなっています(笑)
いまは試験スケジュール的には小休止の期間になりますかね。しっかり休んで来るべき口頭試験、あるいは来年の筆記試験に向けて英気を養っておいてください。
とはいえ、爪はひそかに研いでおくことをオススメします。
筆記試験の出題テーマは秋から冬にかけての社会の動き、行政の取組施策から出題されることが多いですからね。

で、さっそくに試験的にもたいへん重要な報道がありましたのでご紹介いたします。
今回の中間とりまとめは要注目ですよ!
来年の建設部門必須科目Ⅰはこれを踏まえて解答する必要がありますね。今年度の口頭試験では直接問われることはないと思いますが、口頭試験でもこの内容を踏まえた回答ができると安心ですよね。今年の受験生も来年の受験生も皆さん、いまのうちにチェックしておいてください。

なんせ今後の国土形成上の課題(というか踏まえるべき状況)である
●頻発する大規模災害
●新型コロナ感染症の拡大
●SDGs
●デジタル革命
について取り上げられています。
ほかにも「東京一極集中」などもありますので、ぜひチェックしてください。

アオウミガメもサンゴ礁のすき間で小休止
【那覇港沖にて】

2050年を展望した国土の方向性と課題を公表します
~「国土の長期展望専門委員会」中間とりまとめ~

令和2年10月23日

 国土交通省では、昨年10月以降、新型コロナウイルス感染症による影響も踏まえながら、2050年の国土の姿と長期的な課題について検討を進めてきました。
 このたびその中間とりまとめとして、2050年に向けた国土の基本的考え方や国土づくりの方向性・課題を整理しました。


1. 中間とりまとめのポイント
 自然災害の激甚化・頻発化、新型コロナウイルス感染症の発生・まん延、SDGsの取組、世界中で進展するデジタル革命など、昨今、我が国の国土を巡る状況に大きな変化が生じています。
 特に、テレワークなど「密」を避ける新しい生活様式は、これまでの働き方や暮らし方を見直すきっかけとなり、国民のマインドに大きな変化をもたらしています。

 中間とりまとめでは、人口構造をはじめとする2050年の国土を巡る長期的な推計等を示すとともに、この1年間の検討を踏まえ「物」にとどまらない「真の豊かさ」を目指すことを基本的考え方として明確化しました。また、国土づくりにより対応すべき「リスク・課題」や豊かさの実現のために目指すべき「国土の姿」に関して、論点を明らかにしています。


2. 今後の検討内容
 東京への過度な人口集中を是正し、地方においても豊かな暮らしを実現できるようにしていくため、本中間とりまとめで整理されたデータや論点も踏まえつつ、地方の生活圏域の在り方などについてさらに検討を深めていきます。2021年初夏を目途に最終とりまとめの予定です。



中間とりまとめに関する資料は、下記URLからご覧下さい。
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/kokudo03_sg_000214.html

添付資料

報道発表資料(PDF形式)PDF形式

2020年10月11日日曜日

技術士1次試験 おつかれさまでした!

技術士1次試験、たいへんお疲れさまでした。
昨年は東京と神奈川では台風で試験が中止(のちに再試験)となりましたが、今回もちょうど試験日程に合わせるように台風が接近しました。昨年のような大ごとにはなりませんでしたが局所的には土砂崩れや大雨などがあったようです。皆さん、無事に受験できましたでしょうか。

わたしも今日は試験監督として参加しました。
新型コロナウィルス感染拡大防止対策もあって、これまでとはだいぶ異なるルールが設定され、受験生、試験官ともになかなかたいへんでしたね。いちにちのスケジュールも先月の2次筆記試験と同様に、12時からの午後ぶっ通し試験で、間に30分の休憩が2回挟まりましたが、答案用紙や試験問題の配布でぜんぜん休憩になりませんでした(笑)
適性科目も大昔とは違っていまでは総監の択一と同じような出題でずいぶんと難しくなりましたね。
ともかく、途中で脱落する受験生がほぼいなかったというのが嬉しかったですね。それに知り合いの受験生もみんな棄権せずちゃんと受験していたのも嬉しかったです。

できたひとできなかったひといろいろあるみたいですが、1週間後の10月19日(月)に正答が発表されると思いますから、答え合わせをして、手ごたえのあるひと、そして4年の業務経験を来年3月末時点でお持ちのかたは、12月18日(金)の発表を待たずに、来年の2次試験に向けてさっそくにスタートするのがイイと思いますよ。
勉強癖がついている今、続けてポンポーンとイっちゃってください。わたしの身近なひとも1次試験合格の翌年に2次試験を受験してそのまま合格したひとがいます。決して夢物語ではありません。

わたしも2次試験を受験するかたを応援、というかお手伝いしています。

次は2次試験ですよ

2020年10月6日火曜日

建設リサイクル推進計画2020~「質」を重視するリサイクルへ~

すっかり秋になりましたね。
私の住む沖縄も先週末には猛禽類のサシバが北風に乗って渡ってきました。雲も高くなり、水蒸気が少ない(湿度が低い)せいか空の青がくっきりしています。

試験が終わったばかりで、皆さん仕事にまい進しておられることと思いますが、次年度以降の試験でたいへん参考になる(というか要注意)の資料がリリースされたのでご紹介しておきます。

先日のⅡ-1でも出題された建設リサイクル(特定建設資材廃棄物)ですが、早くも関連重要施策が打ち出されました。来年すぐ出題されるかはわかりませんが近いうちに出題されることでしょう。あるいはⅢのほうで出題されてもおかしくありません。特に新規に追加された項目は要注意です。

○廃プラスチックの分別・リサイクルの促進
→SDGsなど国際的に対応が求められている廃プラスチックについて、建設分野
における排出量も大きいことから、これまでの計画では個別に扱っていなかった建
設工事から発生する廃プラスチックの分別・リサイクルを促進
○リサイクル原則化ルールの改定
→中期的に排出抑制、再資源化に資するため、現行のリサイクル原則化ルールにつ
いて、距離制限や搬出先となる再資源化施設の指定等の観点から改定を検討する
・社会情勢の変化(交通網の発達等)による距離制限の改定の検討
・AS塊等の品目別の再資源化施設の指定の検討
○建設発生土のトレーサビリティシステム等の活用
→建設発生土の発生元から最終の搬出先までの移動実態を把握することは、建設発
生土の不適切な取扱の抑制等にも資する可能性があるため、ICT技術を活用し、
発生元から搬出先までを正確に把握するトレーサビリティシステムの導入等につい
て試行を行う

ぎんなん
【東京郊外にて】

「建設リサイクル推進計画2020 ~「質」を重視するリサイクルへ~」の策定について

令和2年9月30日

社会資本整備審議会環境部会・交通政策審議会交通体系分科会環境部会 建設リサイクル推進施策検討小委員会」(委員長:勝見武 京都大学教授)の審議を経て、国土交通省における建設リサイクルの推進に向けた基本的考え方、目標、具体的施策をとりまとめた「建設リサイクル推進計画2020 ~「質」を重視するリサイクルへ~」を策定しました。

概要

 国土交通省は、これまで建設リサイクルや建設副産物の適正処理を推進するため、建設リサイクル推進計画を定期的に策定し、各種施策を展開してまいりました。
 その結果、建設廃棄物のリサイクル率について、1990年代は約60%程度だったものが、2018年度は約97%となっており、1990 年代から2000 年代のリサイクル発展・成長期から、維持・安定期に入ってきたと考えられ、今後は、リサイクルの「質」の向上が重要な視点となると想定されます。
 今般、このような背景を踏まえ、「建設リサイクル推進計画2020~「質」を重視するリサイクルへ~」を策定しましたので公表いたします。

<建設リサイクル推進計画2020のポイント>
・維持・安定期に入ってきた建設副産物のリサイクルについて、今後は「質」(※)の向上が重要な視点
 (※)より付加価値の高い再生材へのリサイクルを促進するなど、リサイクルされた材料の利用方法に目を向ける
・建設副産物の再資源化率等に関する2024年度達成基準値を設定し、建設リサイクルを推進
主要課題を3つの項目で整理し、取り組みの実施主体を明確化
・新規施策として、「廃プラスチックの分別・リサイクルの促進」、「リサイクル原則化ルールの改定」、「建設発生土のトレーサビリティシステム等の活用」に取り組む
・これまで本省と地方で分かれていた計画を統廃合

2020年10月3日土曜日

建設部門 必須科目Ⅰ 担い手確保と戦略的なメンテナンス

総監必須科目の択一正答が発表され数日が経過しました。
皆さんからの報告によると、今回の択一はなかなか難しかったようで6割に満たないかたが多いような印象を持ちました。
自分の筆記試験における成績(点数)を開示請求したところ、総監4回受験したうち、論文の成績はほぼ6割前後を推移していたのですが、択一が6割程度のときは不合格、合格したときは8割取れていたことが判明しました。そんな自分の経験を踏まえて受講生の皆さんには最低でも6割、できることなら8割取ってください!とハッパをかけていたんです。
だもんで早くも諦めモードのかたが多いようなのですが、5割で合格しているひともいますので択一5割取れていたらまだ諦めないでください。とにかく再現だけはしておいてくださいね。毎年のことですが、思いもよらず合格しちゃったひと(そしてそれで慌てるひと)がいますので。

そしてスミマセン!建設部門必須科目の問題文をアップするのを忘れていました。
技術士会からは問題文も公表されましたので速報としての価値は全くありませんが、周年通じて参考にしてくださるかたがいますので、いまさらながらなのかもしれませんが必須科目の問題文を掲載します。

昨年から復活した記述式による必須科目、テーマは「(地域の中小建設業における)担い手確保」と「戦略的なメンテナンス」でした。
昨年同様、今年も2題とも建設部門の王道中の王道でしたね。どちらの問題でも書けるように準備していたかたが多いのではないでしょうか。建設環境のひとはインフラ維持管理をからめたネタを準備していたひとが多いようですからⅠ-2のほうを選んだのかな。
ひとつめの担い手確保のほうは「地域の中小建設業が今後もその使命を果たすべく」というのが奮っていますね。わたしも地方の(建設業ではないのですが)中小企業に勤務する中間管理職という立場ですので、担い手不足、担い手確保、技術継承、事業継続についてはとても敏感になっています。建設業と違って環境調査会社なのでインフラ施設建設のための測量、設計や施工には絡んでいないということもあって問題文にある「地域の安全安心を支える」というまでの意識はやや薄いのですが、やはり社会の一員としての「使命」は意識しています。ここらへんの心情は技術者倫理にも繋がっているんでしょうね。

テーマとは別に、問い方も微妙に変化していました。昨年の問題文と比べてみますと、
(1)~課題を抽出し分析せよ。
だったのが今年は
(1)~課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
となってました。
観点ってなんだよ、分析しなくていいのかよ、と思わなくもないですが、観点を示すことが分析したことになるんでしょうね。

そして(2)は同じでしたが、次の(3)ですがⅠー1のほうだけちょっと変わりました。
(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
だったのが
(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と,新たな懸案事項への対応策を示せ
にアレンジされていましたね。昨年度のようなマイナスの影響だけでなく、プラスマイナスの影響、つまり正負両面について書けばいいのではと思います(必ずしもプラスの波及効果でなくてもいいのですが)。

そして(4)も昨年とほぼ同じで技術者倫理と社会の持続性についてのものでした(昨年及びⅠー2は社会の持続可能性ですが)。

さらに意外と大きな変化ともいえるかもしれませんが、昨年の試験では、
答案用紙3枚以内にまとめよ。
だったのが
答案用紙3枚を用いてまとめよ。
に変わっていました。2枚ではダメかもしれませんね。

9 建設部門【必須科目Ⅰ】
Ⅰ 次の2問題(Ⅰ-1,Ⅰ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(答案用紙に解答問題番号を明記し,答案用紙3枚を用いてまとめよ。)

Ⅰ-1 我が国の総人口は,戦後増加を続けてきたが,2010年頃をピークに減少に転じ,国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)によると,2065年には8,808万人に減少することが予測されている。私たちの暮らしと経済を支えるインフラ整備の担い手であり,地域の安全・安心を支える地域の守り手でもある建設産業においても,課題の1つとしてその担い手確保が挙げられる。

(1)それぞれの地域において,地域の中小建設業が今後もその使命を果たすべく担い手を確保していく上で,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と,新たな懸案事項への対応策を示せ。

(4)上記事項を業務として遂行するに当たり,技術者としての倫理,社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。


世界最古の建設会社 金剛組
578年創業で現存する世界最古の企業
【大阪 四天王寺にて】

Ⅰ-2 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され,建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり,急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また,高度経済成長期と比べて,我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。
 こうした状況下で,社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには,戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ,以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中,老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

2020年9月27日日曜日

令和3年度 技術士試験対策 添削講座

コロナ感染拡大防止のため当初の予定から2か月延期された令和2年度技術士筆記試験が無事に終わりました。
試験内容が大きく変更された昨年度試験の様式を継承し、昨年通りの問いの立て方でした。また出題ジャンルもほぼ想定内のものでしたね。わたしの受講生や知り合いの受験生の皆さんからは「9割がた書けた」という報告が大半です。例年にないことです。皆さん合否のボーダーラインが上がっちゃうことを心配しておられますが、対受験者の筆記試験合格率は上がるのではないでしょうか。
そんなこんなで多くの方が書けた実感とともに心配も尽きないためか「再現論文をみてください」という依頼がドシドシ寄せられています。頼られるのはありがたいですね。嬉しい悲鳴とはこのことです。
そういうわけでありまして、受講生の皆さんに背中を押される恰好でここに令和2年度試験の再現論文コメント評価を含めた次年度試験に向けての講座を開講することにいたします。

わたしの講師としての活動は、平成22年度試験に合格した翌年からSUKIYAKI塾の添削講座に参加するかたちでスタートしました。
SUKIYAKI塾のほか、身近な知り合いを含めると、令和2年度筆記試験までの10年間でのべ246名ほどのかたたちに指導アドバイスしたことになります。そしてその一助となったかどうか、令和元年度試験までの9年間で58名のかたが合格されました。
また、平成27年度からは総監の指導アドバイスも開始したところ、初年度にもかかわらず6名ものかたから吉報をいただくことができました。その後も着実に合格者を出しています。わたしはあくまで触媒にすぎませんが、『総監合格』にいくらかでも貢献できたであろうこと嬉しいですね、講師冥利に尽きます。

SUKIYAKI塾の活動と平行して綴り始めたこのブログですが、平成26年ごろからブログを訪問してくださるひとが増え始め、それに比例するように添削指導の依頼をあちらこちらから受けるようになりました。そこで平成28年から独自の添削講座を開講して受験に真剣に取り組む方のサポートを始めました。

軌道に乗った平成29年度以降、多くの受講生の皆さんとメールによる濃密なやりとりができました。受講生に恵まれたことが大きいと感じていますが、受講生の皆さんの理解の度合や伸び具合がそれはとても良い感触でした。
下記は令和元年度筆記試験の合格発表後にいただいたメールから抜粋しました。

【建設環境】
●技術士の筆記試験に合格しました。ありがとうございました。口頭試験も確実に合格できるようさらに1ヶ月努めて参ります。取り急ぎ、御礼まで。

●筆記試験に合格しておりました。今年は添削回数少なかったのですが、昨年度より、過去問の答案作成を通して論文を何度も繰返しコメントいただき、本当にありがとうございました。論文を練り上げていくことで、題意に沿った書き方、論文構成が大変勉強になりました。手ごたえはなく、合格したことに驚くばかりですが、今後、口頭試験にむけてできる限り準備してまいりたいと思います。取り急ぎ、すごろく様に添削お礼申し上げます。ありがとうございました。

●おかげ様で筆記試験に合格しました!ご指導いただき本当にありがとうございました。

●合格してました。ダメかと思ってましたが先生にいただいた評価コメントで少し期待していました。ご指導ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

【総監】
●本日、総監筆記試験の発表があり、奇跡的に合格していた事が解りました。
すごろくさんに何回も論文を添削頂き、「総監の視点」を身に付けていた事が合格に繋がったと感じています。本当に、ありがとうございました。
試験当時は問題(ヒューマンエラー)の論述設計に時間を要し、少し雑な論理展開になってしまった為、全く自信がありませんでしたが、最終的には「総監としての視点」が評価されたと考えています。重ねて、御礼申し上げます。

●筆記試験に合格をしておりました。取り急ぎのご報告まで。

●おかげさまで筆記試験に合格いたしました。ご指導ありがとうございました。
過去問を添削していただき、開始当初はA評価からは程遠い状態から始まりましたが、2年分の過去問の添削・修正が終わるころにはパターンがつかめました。筆記試験では、添削時と同様のパターンで迷いなく記述することができました。ただ時間ぎりぎりまで記入にかかったので、もう少し早く書く練習をしておけばなお良かったと思います。択一が約6割の正解だったので、筆記に助けられました。

●無事合格しました^_^
まだ、郵送での封書は届いてないので、試験の日はわかりませんが、これからまた、数ヶ月前の記憶を戻していきます。もし、面接に向けてアドバイスを頂けたら、幸いです!御指導、本当にありがとうございました^ ^

などの嬉しい報告をいただきました。。
これまでの指導経験を注力しますのでお任せください。

そのほか筆記試験再現論文に対するコメント評価も行います。
先日の試験答案について第3者の視点からの評価を欲しているかたはぜひどうぞ。

本サービス(添削指導アドバイス)はSUKIYAKI塾とは異なり有料でお受けします。
対象とする技術部門科目は以下の2つです。
●建設部門建設環境
技術士受験指導の経験は早いもので10年、そして建設環境分野の技術者としての業務経験は25年になりました。これまで主に沖縄県内での環境調査、環境影響評価、自主アセス(ミニアセス)に携わっております。
わたしの専門はどちらかというと自然環境に関する分野ですので生活環境の保全に関する現場感覚はやや劣るかもしれません。しかしながらこれまで添削するうえで支障はありませんでした。
また、他の部門科目(例えば環境部門など)についてもご希望であればお引き受けします。ただし専門技術に関する指導はできませんので論理構成や文章に関する指導アドバイスとなります。
なお、これまで建設環境以外には、河川、砂防及び海岸・海洋の環境寄りのかた、環境部門の環境保全計画と自然環境保全、水産部門の水産資源及び水域環境と水産土木の環境寄りのかたを指導いたしました。

●総合技術監理部門
総監については科目を問いません。ただし建設-建設環境以外の科目の場合には専門技術を踏まえた管理については言及できないこともあります。
なお、これまで建設環境以外には、施工計画・施工設備及び積算、道路、都市及び地方計画、河川砂防・海岸海洋、港湾及び空港、土質及び基礎、上水道及び工業用水道、農業土木、電気設備、環境保全計画、自然環境保全のかたを指導いたしました。
ご希望のかたには、平成29年2月23日で頒布が終了した「技術士制度における総合技術監理の技術体系(第2版)」(いわゆる青本)のテキストデータを差し上げます。
なお一部内容を法律等の改正に伴い書き換えています(ただしH29年時点までのものです)。

下記の5つのコースを設けました。
※併願・重願の場合はそれぞれの部門科目単位で受け付けます。

★お申込みはこちらからお願いします

①令和2年度筆記試験の再現論文に対するコメント評価
内容:再現論文のコメント評価を行います。建設環境は必須科目Ⅰ、選択科目Ⅱ-1、Ⅱ-2、Ⅲの合計4つ、総監は記述論文(必須科目Ⅰ-2)です。
原稿に赤を入れるのではなく、メールでコメントをお返しする方式です。
返信回数:各問題に対し、1回のコメントとそのコメントを受けての再質問・返信を1回の計2回
※注意書き等の文言が微妙に変化した令和2年度試験の答案用紙を模したワードファイルを差し上げます。
料金:3,000円

【令和3年度試験対策】
②出願書類作成コース
期間:受付完了時から令和3年度試験の受験申込期限日(4/19)の7日前の4/12(月)まで書類を受け付けます(令和2年度技術士第二次試験の受験者で「受験資格」を満たすかたについては5/6まで)。
内容:受験申込書の記載内容と業務経歴票(5行の業務経歴と「業務内容の詳細」)についての添削指導を行います。令和3年度の様式が正式発表されるまでは令和2年度様式で添削指導を行い、令和3年度様式が発表され次第、あらためて添削指導いたします。
うまく作成できないかたには業務経歴のたな卸しと詳細業務の骨子の作成アドバイスからスタートします。
総監を除いてですが、令和元年度から口頭試験が「技術士コンピテンシー」に沿った質問になりました。これを踏まえた受験申込書(経歴票)を作成する必要があります。
添削回数:期間内は回数無制限です。ただしわたしがOKと判断したらそこで終了とすることもあります。
料金:15,000円

③筆記試験論文添削 長期コース
期間:受付完了時から令和3年度筆記試験日の7日前まで論文を受け付けます。
内容:建設環境については必須科目と選択科目を、総監については記述論文(必須科目Ⅰ-2)の添削指導を行います。過去問題に対する回答論文の添削です。原稿に赤を入れるのではなく、メールでコメントをお返しする方式です。
論文の仕上がり具合に自信がないかた、文章作成が苦手なかた、論理的思考が苦手なかた、専門技術分野が偏っているかた、それぞれに応じた指導をいたします。
添削回数:期間内は回数無制限です。ただし複数の論文を同時並行では添削しません。わたしが次の問題に移ってOKと判断してから別の設問に取り組んでください。
※注意書き等の文言が微妙に変化した令和2年度試験の答案用紙を模したワードファイルを差し上げます。
料金:30,000円 (令和2年度の筆記試験論文添削コースを受講したかたで同部門同科目の場合は25,000円)

④筆記試験論文添削 中期コース
期間:令和2年12月下旬頃から受付を開始します。受付完了時から令和3年度筆記試験日の7日前まで論文を受け付けます。
内容:建設環境については必須科目と選択科目を、総監については記述論文(必須科目Ⅰ-2)の添削指導を行います。過去問題に対する回答論文の添削です。原稿に赤を入れるのではなく、メールでコメントをお返しする方式です。
論文の仕上がり具合に自信がないかた、文章作成が苦手なかた、論理的思考が苦手なかた、専門技術分野が偏っているかた、それぞれに応じた指導をいたします。
添削回数:期間内は回数無制限です。ただし複数の論文を同時並行では添削しません。わたしが次の問題に移ってOKと判断してから別の設問に取り組んでください。
料金:20,000円

⑤筆記試験論文添削 短期コース
期間:令和3年4月末頃から受付を開始します。受付完了時から令和3年度筆記試験日の7日前まで論文を受け付けます。
内容:建設環境については必須科目と選択科目を、総監については記述論文(必須科目Ⅰ-2)の添削指導を行います。過去問題に対する回答論文の添削です。原稿に赤を入れるのではなく、メールでコメントをお返しする方式です。
論文の仕上がり具合に自信がないかた、文章作成が苦手なかた、論理的思考が苦手なかた、専門技術分野が偏っているかた、それぞれに応じた指導をいたします。
添削回数:期間内は回数無制限です。ただし複数の論文を同時並行では添削しません。わたしが次の問題に移ってOKと判断してから別の設問に取り組んでください。
料金:15,000円

【注意事項】
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●本サービスに使用するファイル形式はPDFもしくはMS Wordファイルのみです。これ以外のファイルは原則として対応できません
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●メール受信後、添削コメント等を返信するまでに最大4日間の日数をいただきます
●総監については科目を問いませんが建設-建設環境、水産-水産資源及び水域環境以外の科目の場合には専門技術を踏まえた管理については言及できないこともあります
●領収書は発行いたしません
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本サービス(添削指導アドバイス)をご希望されるかたは上記の内容を確認いただいたうえで下記のフォームにてお申込みください。お申込みの時点で上記の注意事項に同意いただいたものとします。

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2020年9月26日土曜日

建設環境 選択科目Ⅲ-2 持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組としてのグリーンインフラ

続きましてⅢ-2グリーンインフラです。
このブログでもシツコイくらいに推していたグリーンインフラ。前回は平成30年度試験のⅢ-1で出題されました。間に1年置いただけで再び出題されました!
目論見通りだったのでキモチイイですね!

グリーンに染まる通天閣 
【大阪市浪速区】

Ⅲ-2 グリーンインフラとは,グリーンインフラ推進戦略(令和元年7月国土交通省)によれば,社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において,自然環境が有する多様な機能を活用し,持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組である。グリーンインフラの特徴と意義は,①機能の多様性,②多様な主体の参画,③時間の経過とともにその機能を発揮するという点にある。これらの点を踏まえ,以下の問いに答えよ。

(1)グリーンインフラの取組を社会資本整備や土地利用等を進める際の検討プロセスに取り込むに当たって,取組を実施する技術者としての立場で,グリーンインフラの特徴と意義を踏まえた多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。


なかでも、先月に取り上げたばかりの「グリーンインフラを活用した持続可能で魅力的な地域づくり」がドンピシャでしたね。これを踏まえて記述できたら完璧でした。もちろんこの資料を踏まえていなくてもぜんぜん構わないのですが。

わたしが受験した環境部門自然環境保全のほうでも「生態系を活用した防災減災(Eco-DRR)」が出題されると山を張ったのですが直接の出題はありませんでした。それでも(勝手ながら?)部門共通の必須科目のほうで課題&解決策として取り上げミッチリ書き込みました。旨くいっているとイイのですが。。。