2013年8月31日土曜日

平成26年度国土交通省予算の概算要求のポイント

早いもので8月ももう終わりですね。
沖縄でも台風が連続して接近し始め、朝夕の風が心なしか涼しくなり、空に浮かぶ雲の高度もあがったようにも思います。

そんなこんなで筆記試験も遠い過去になりつつありますが、身の回りで「来年の試験を受験しようと思っています」などというフレッシュな表明をちらほら受けるようになりました。
そんなひとには、まず今年の試験問題をチェックして、何をすべきか―合格するのに足りないもの―を知るべきだとアドバイスしています。

過去問の次にチェックしてほしいのは、やっぱり国交省白書ですね。
でもこれまで白書になじみのないいわば素人がいきなり読み始めてもきっと1ページくらいで睡魔に襲われるんじゃないかと思います。
白書の概要版みたいなのがあるといいのですが、とにかく事前に国の施策の大まかな方向性が頭に入っているといいですよね。
そんなことを考えていたところ、ちょうど国交省メルマガに、来年度の概算要求のポイントの記事がありました。
ここに書いてある方針を踏まえて白書を読むと頭に入りやすそうに思います。

しかもそれだけじゃなくって、この概算要求にあげられているひとつひとつが実は筆記試験の記述論文に設定される「課題」そのものなのです。
技術士第二次試験というのは、つまるところ概算要求に挙げられているようなさまざまな「課題」の達成を阻む問題点を抽出してその解決策を提案できる、そしてそれを論理的に記述できる能力が問われているのです。
ぜひこのなかから建設環境分野をピックアップしてそれについて考察を巡らせてみてください(あまりないかもしれませんけど)。
また、解答論文の実際の記述時にも使える言い回し(単語、センテンス、箇条書き)のネタ帳にもなっています。

というわけで、日常からなにげなしにこういった文言に触れておくと、来年あらためて勉強開始する時のスタートダッシュが図れる、といいますかアドバンテイジが得られているのではないでしょうか。
お勧めしたい練り上げ法として、この内容を頭に入れて会社の後輩のひとにでも口で説明してみるという方法があります。
現地調査に赴くときの移動中の車中なんかで会話がなくなったら、なにげに国の方向性の話を振ってみてレクチャーしてみてはいかがでしょうか。
とても身になる勉強方法だと思いますよ。
多少間違ったことを喋っちゃってもそれがかえって勉強になります。
間違いを発すると、その誤ち、そしてその正解は一生(は大げさですが)忘れなかったりしますからね。

では!
表参道【渋谷区神宮前】

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 ■  ■ □     ■ ■■■■         2013年8月27日 第1205号
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 ■ ▼ ■ □     ■    ■   国土交通省メールマガジン
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 [1]新着情報
    ・本日の報道発表
   ・トピックス
   ・大臣会見要旨(8月21日)
   ・人事異動(8月27日)
    ・イベント・シンポジウム
   ・統計情報
  [2]国土交通セミナー
    平成26年度予算の概算要求のポイント
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 [2]国土交通セミナー
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◎平成26年度予算の概算要求のポイント
【平成26年度予算概算要求の基本方針】
<全体方針>
 ・被災地の復興に取り組むとともに、防災・減災や老朽化対策を推進し、経
  済成長や生活向上の大前提である安全・安心の確保を図ります。
 ・我が国の成長実現に向け、国際競争力の強化、時代の変化に対応・先取り
  した、新たな経済発展の基盤となる戦略的な取組を展開していきます。
 ・要求に際しては、行政事業レビューの結果等の的確な反映等を行い、予算
  の無駄を排除します。

<真に必要な公共事業予算の確保>
 ・公共事業予算は、平成25年度予算において、これまでの右肩下がりに歯止
  めがかかりました。平成26年度予算においては、先の全体方針に示した諸
  課題にバランスよく対応するため、通常の要求及び「新しい日本のための
  優先課題推進枠」に係る要望を最大限活用し、対前年度比1.17の要求・要
  望を行います。

<成長をもたらすストック効果の早期実現>
 ・インフラは完成してストック効果が発揮されて初めて、国民が安全・安心
  や生活の向上を実感でき、また、経済成長を加速させることができます。
  蓄積されたストックを戦略的に維持管理・更新し、賢く使うとともに、完
  成間近のインフラの集中的な整備・完成を行うことなど、成長をもたらす
  ストック効果の早期の発揮を図ります。

<総合力の発揮>
 ・限られた財政資源の中で効率的なインフラの整備・運営・更新を行い、国
  民がサービスの質的向上を実感できるものとするため、投資効果の高い事
  業への重点化を図るとともに、PPPやPFIを推進するなど民間の資金
  やノウハウを積極的に活用します
 ・規制改革等と一体となって講じることにより、民間の活力を最大限に引き
  出します。

【主な事業内容】
1.東日本大震災からの復興加速
 ・住宅再建・復興まちづくりの加速、事業の早期着手・適正な施工確保
 ・インフラの復旧・整備(1,822億円)
 ・被災した公共交通の復興の支援
 ・被災地の観光振興(9億円)
 ・被災地におけるPPP/PFIの推進(2億円)

2.国民の安全・安心の確保
(1)防災・減災、老朽化対策
<災害発生時の応急活動の強化・充実>
 ・電子防災情報システムの構築及びTEC-FORCEの活動体制の強化(61億円)
 ・気象等の監視・予測システムの強化(126億円)
 ・災害時の救援・緊急輸送能力等の向上(82億円)
<大規模地震に対して戦略的に推進する対策>
 ・公共施設の耐震化、津波対策等による強靱化の推進(1,234億円)
  ・代替性確保ネットワーク整備等の防災・震災対策(4,802億円)
 ・コンビナート港湾の強靱化の推進(2億円)
 ・鉄道施設の耐震対策に対する支援(82億円)
 ・老朽建築物の建替え、耐震改修等の促進(280億円)
 ・地下街の防災対策の推進(20億円)
<水害・土砂災害対策、渇水対策>
 ・大規模水害・土砂災害等に備えた治水対策、渇水対策の推進(2,972億円)
 ・地下水対策の推進(0.6億円)
<災害への対応力の強化>
 ・地籍整備による土地境界の明確化の推進(132億円)
 ・機動的な被害未然防止対策の強化(261億円)
<社会資本の戦略的な維持管理・更新>
 ・インフラ長寿命化の推進、点検・診断等の信頼性確保等(3億円)
 ・社会資本の戦略的な維持管理・更新の推進(3,731億円)
<防災・メンテナンス技術等によるイノベーション>
 ・電子防災情報システムの構築及びTEC-FORCEの活動体制の強化(61億円)
 ・次世代インフラマネジメントシステムの構築(30億円)
<地域における総合的な事前防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援>
 ・地域における総合的な事前防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中
  的支援(防災・安全交付金)(12,227億円)
(2)公共交通等の安全・安心の確保
 ・高速ツアーバス事故等を受けた安全対策の強化(2億円)
 ・航空の安全対策の強化(4億円)
 ・海上交通、鉄道の安全対策の強化(4億円)
(3)戦略的海上保安体制の構築(459億円)

3.経済・地域の活性化
(1)国際競争力の強化等
<都市の国際競争力強化・人流の円滑化>
 ・大都市の国際競争力の強化のためのビジネス・生活環境整備(106億円)
 ・ITS技術を活用した円滑、安全・安心な道路交通の実現への取組(1億円)
 ・首都圏空港の機能強化(147億円)
 ・整備新幹線の着実な整備(822億円)
<強い経済の再生と成長を支える物流システムの構築>
 ・総合的な物流施策の推進(1億円)
 ・効率的な物流ネットワークの強化(2,037億円)
 ・港を核とした国際コンテナ物流網の強化(国際コンテナ戦略港湾政策の
  深化と加速)(536億円)
 ・資源・エネルギー等の安定的かつ安価な輸入の実現に向けた効率的な海上
  輸送網の形成)(43億円)
<競争力強化のための社会資本の総合的整備>
 ・競争力強化のための社会資本の総合的整備(社会資本整備総合交付金)
                                                      (10,558億円)
<民間投資の促進>
 ・PPP/PFIの推進(26億円)
<海洋の開発・利用・保全の戦略的な推進>
 ・海洋資源等の開発・利用の推進、海洋フロンティアを支える環境整備(170億
円)
<国際展開戦略>
 ・インフラシステム輸出等の推進(23億円)
(2)地域の活性化と豊かな暮らしの実現
<まちの活力の維持・増進(都市の再興)>
 ・民間事業者の資金や公的不動産を活用した都市機能の立地誘導等(53億円)
<人口減少・高齢社会、エネルギー問題等に対応するまち・地域づくり>
 ・スマートウェルネス住宅・シティの実現に向けた支援(789億円)
 ・超小型モビリティの導入促進(4億円)
 ・地域交通のグリーン化を通じた電気自動車の加速度的普及促進(6億円)
<公共交通の活性化>
 ・公共交通の充実(新たな制度的枠組みの構築、ホームドアの整備促進等)
                            (388億円)
 ・鉄道による地域活性化(136億円)
 ・空港の抜本的な能力向上(300億円)
<条件不利地域等の支援>
 ・離島、奄美群島、小笠原諸島等の条件不利地域の振興支援(65億円)
 ・「小さな拠点」を核とした「ふるさと集落生活圏」の形成推進(4億円)
<地域の活力を支える社会資本の総合的整備>
 ・地域の活力を支える社会資本の総合的整備(社会資本整備総合交付金)
                           (10,558億円)
<住宅・不動産市場の活性化、建設市場の環境整備>
 ・不動産市場の活性化のための環境整備(6億円)
 ・中古住宅流通・リフォーム促進等の住宅市場活性化(80億円)
 ・建設市場の環境整備等の推進(6億円)
(3)観光立国の推進
 ・訪日プロモーションの戦略的・重点的実施等(72億円)
 ・社会資本整備と一体となった観光振興
 ・観光資源のポテンシャルを活かした魅力ある観光地域づくりの支援
                           (11億円)
 ・国際会議等(MICE)の誘致・開催の促進(5億円)

 ■平成26年度国土交通省関係予算概算要求概要
  http://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_000592.html

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2013年8月15日木曜日

日本の水資源

筆記試験も終えてお盆になりました。
お盆になるとついつい旧盆のことを書きたくなっちゃうのですが、昨年にやっているのでやめておきます。いちお、日程だけでもメモがわりに書いておきます。
盆休み、沖縄は旧暦(の7/15)でやるんです。
今年のお盆は以下のスケジュールとなっています。
8月19日(月)ウンケー(迎え盆)
8月20日(火)ナカビ
8月21日(水)ウークイ(送り盆)

今年からは体験論文の作成もないし、筆記試験の後始末が終わったら、試験結果発表までやることないですよね。
そんな時間が有り余っているときには行政資料をパラパラ斜め読みしておくのがイイかもしれません。

特に今年は「経験したことのないような大雨」のわりにはそこかしこで「渇水の懸念」があるなど、不安定すぎますよね。
水事情は世界的にも大問題となっていますが、水資源が豊富だといわれてきたここ日本国においても様々な課題~問題があるようです。
建設環境分野とどこまで関わるかは人によりそれぞれですが、建設部門の一般教養としてカジッておくのもイイと思います。

「雨垂水は醤油使い(あまだいみじやしょうゆぢけぇ)」
雨水はいつでも降るものではなく、日照りがこないともかぎらないから醤油を使うようによくよく用心し、大切に使わなくてはいけない【沖縄のことわざ】

ブループラネット【南大東島】

平成25年版

平成25年版日本の水資源について

~ 安全・安心な水のために ~

 
平成25年8月
国土交通省 水管理・国土保全局 水資源部
 
はじめに
 

 「日本の水資源」は、国土交通省水管理・国土保全局水資源部が関係機関の調査結果等を基に我が国の水需給や水資源開発の現況、今後早急に対応すべき水資源に関わる課題について総合的に取りまとめたもので、昭和58年から毎年公表しております。
 今年の「日本の水資源」では、第I編として「安全・安心な水のために」をテーマに、水資源の現状と課題等を紹介し、これまで積み重ねられてきた水資源開発の成果を将来も活用し、今後も安定的に水を利用していくために国内外で取り組むべきであると考えられる事項を取りまとめて紹介いたしました。また、第Ⅱ編においては、我が国の水資源と関心が高まる水循環の現況についての資料を整理しました。
 本書を通じて、多くの国民の皆様に我が国と世界の水資源の実態をご理解いただくとともに、安全・安心な水のための基礎資料として活用していただき、あわせて水資源行政に一層のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

日本の水資源 概要版(PDF版)


2013年8月8日木曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅲ-2の問題文【建設環境】

最後にⅢ-2の問題です。
こちらは水質モノでしたね。
閉鎖性水域の水質改善策についてはこれまでもたびたび出題されてきた、いってみれば建設環境の王道テーマです。
ここ数年の主役である低炭素モノなんかとても足元にも及ばない、建設環境1期生的なテーマです。
試験方法変更の初年度ということで、まずはこの大先輩テーマが選ばれたのかもしれませんね(コレを予想できていたら凄く気持ちよかっただろうな)。

Ⅲ-2 東京湾,伊勢湾,大阪湾等の閉鎖性海域の水質改善に向けて,各海域で再生行動計画が策定され,関係機関が流入負荷削減対策等に取り組んでいる。しかしながら,貧酸素水塊の発生が解消されず,生物の斃死を招く等の課題も残されている。このような状況を考慮して,建設環境の技術士として以下の問いに答えよ。
(1)閉鎖性海域の環境改善を図る上であなたが重要と考える目標について述べよ。
(2)上述した目標を達成するための対策を1つ挙げ,その対策の技術的課題を示せ。
(3)上記の課題を解決するための技術的提案を示すとともに,その提案を実現する際の問題点,トラブルについて述べよ

しかしアレですね、対象とする水域が「閉鎖性」というのならまだしも、
『海域に限定かよ、なかなか厳しいじゃないか』
と最初に問題文の前段部分を読み進めているときにはそんなことが頭をよぎっちゃいました。
皆さんはどうでしたか?
で、問題(1)を読んだところでやっと閉鎖性海域に注ぐ河川等の環境改善による(閉鎖性海域の水質改善)策でも全然ダイジョウブじゃないかということが判明し、ひとまず安堵。
とはいえ前段にあるように、再生行動計画による流入負荷削減の取組みについてはちょっとでも触れたほうが評価は高いんでしょうね。

真夏の静かな海と空【沖縄島大宜味村津波】

「課題解決問題」については、口頭試験でも使用されることが明記されています。
再現はしておいてください。
一字一句正確な再現でなくとも、骨子的な論理構成とキーワードがわかるようにはしておくべきです。
もちろん後につづくひとたちのためにも、なるべく実際に解答したとおりの論文が再現できると最高です。
そして、いまいち書けなかったという自覚のあるひとは、再現だけでなく、資料を駆使して模範解答を作成してください。これはできたら「専門知識及び応用能力」のほうも見直ししておいてください。
さらに欲を言えば、選択しなかったほうの問題についても上記同様の模範解答的なものを作成しておけばバッチリじゃないですかね。
↑コレ、ぜひオススメです。

それでは、ひとまずこれにていったん筆をおきます。
お疲れさまでした!

2013年8月7日水曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅲ-1の問題文【建設環境】

つづいて課題解決問題です。
これも想定の範囲内の設問でしたね。
ひとつめは建設部門というか国交省の環境分野の最重要課題である「低炭素都市づくり」についてのまさに王道的な出題でした。

Ⅲ 次の2問題(Ⅲ-1,Ⅲ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記し,答案用紙3枚以内にまとめよ。)

 Ⅲ-1 我が国における総CO2排出量においては,都市における社会経済活動に起因することが大きい家庭部門やオフィスや商業等の業務部門と自動車・鉄道等の運輸部門における排出量が全体の約5割を占めている。このような状況を踏まえ,建設環境の技術士として以下の問いに答えよ。
(1)低炭素都市づくりを実現するための方策を3つ具体的に示し,各々の方策が低炭素に寄与する仕組みを述べよ。
(2)その方策のうち,あなたが重要と考えるもの1つについて,その理由を説明するとともに,その方策の実施に当たっての技術的課題を述べよ。
(3)上記の課題を解決するための技術的提案及びその提案の留意点やリスクについて述べよ。


日暈【沖縄県宜野湾市】

面白く感じたのが、低炭素都市づくりの実現方策だけでなく、その方策に対する技術的課題を述べさせ、それに対する解決策、さらにその留意点(やリスク)について述べさせるものでした。
上っ面だけでは撃沈しちゃうと思いますが、環境分野を専門にしているひとだったらなんとか対応できたのではないでしょうか。

とはいっても、SUKIYAKI塾で薦めているAPECさん考案の「骨子法」的にみると、
  • 設問での方策とは、骨子法での課題
  • 設問での技術的課題とは、骨子法での問題点
  • 設問での技術的提案とは、骨子法での解決策
と置き換えればイイだけです。これまでの出題スタイルと同じですよね。

それから問題文最後の留意点やリスクに戸惑ったひとが意外と多かったようですが、これもこのブログで触れてきたように、その解決策が成立する条件(あるいは成り立たない条件)など注釈的なことを根拠とともに書いておけばOKだと思います。

他の部門や科目の問題でもこの「留意点」というのはよく問われています。
技術士の資質として、論理的に課題に対する解決策を提案できることは当然のこととして、実現性のある解決策の提案力、それはつまりは現地の状況にあわせて臨機応変に技術を用いることができるという応用力が確認されるのだと思います。

Ⅲ-2については次回とします。
では!

2013年8月6日火曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅱ-2の問題文【建設環境】

試験が終わっての投稿第2弾。
早くもたくさんのかたが訪れてくださっているので、続けます。

Ⅱ-2 次の2設問(Ⅱ-2-1,Ⅱ-2-2)のうち1設問を選び解答せよ。(解答設問番号を明記し,答案用紙2枚以内にまとめよ。)

 Ⅱ-2-1 ある建設事業によって環境への影響が懸念される区域内に希少種が生育・生息している。あなたは建設環境の技術士として,工事実施に伴う希少種に対する影響を予測し,環境保全措置を検討することになった。建設事業希少種を1種想定した上で,当該業務に関する以下の問いに答えよ。
(1)あなたが想定した建設事業希少種を挙げよ。また,想定した建設事業の概要を述べよ。
(2)希少種に及ぼす環境影響として考えられる項目を2つ挙げ,その内容を希少種の特性との関連から述べよ。
(3)(2)で挙げた項目から1つ選び影響を予測する手法を述べよ。
(4)(3)で選定した項目に対して考えられる環境保全措置を1つ挙げ,その内容を述べよ。また,当該環境保全措置を検討する際に留意すべき事項を1つ挙げよ。


 Ⅱ-2-2 工事による生活環境への影響が懸念される建設事業において,影響についての調査・予測,環境保全措置の検討を行うに当たり,以下の問いに答えよ。
(1)建設事業の内容,及びその建設事業が実施される地域の状況を想定し,具体的に述べよ。
(2)懸念される環境影響について,影響を及ぼす要因及び影響を受ける環境要素(以下,環境項目という。)を挙げ,その理由を述べよ。
(3)(2)で挙げた環境項目を1つ選び調査・予測を実施する手順を述べよ。
(4)(3)で選んだ環境項目について,実施することが適切と考えられる環境保全措置を説明せよ。
ジュゴンの食み跡にスター☆フィッシュ【沖縄島北部西海岸】

いやー、驚きました。
これ、選択といいながら、2つとも同じ問題じゃないですか。
自然環境か生活環境かってだけです。
どちらも
  1. 建設事業の概要
  2. 建設事業による環境影響の内容とその要因
  3. 環境影響の予測手法あるいは手順
  4. 環境保全措置の内容
を述べよ、って問いです。
これこそが「建設環境」の社会的存在意義なのだ、ということをあらためて技術士会から知らされたような気分です。
それにしてもどストレート、直球すぎるくらいな設問ですねえ。
あらかじめ技術士会から平成25年度技術士第二次試験の内容についてに示されていた「選択科目」に関する応用能力
【概念】
○ これまでに習得した専門的知識や経験等に基づいて,与えられた条件に合わせて正しく問題点を認識し,必要な分析を行ない,適切な業務プロセス留意すべき内容を説明できる能力
【内容】
「選択科目」に関係する業務に関し,与えられた条件に合わせて,専門的知識や実務経験に基づいて業務遂行手順が説明でき,業務上で留意すべき点工夫を要する点等についての認識があるかを問う内容とする

とある内容そのままでしたね。
これはみなさんあらかじめ準備して対応できたのではないでしょうか。
あるいはたとえ事前に準備していなくとも、ふだんの実務で行っている業務のエッセンスを抽出したらうまい具合に書けたのではないでしょうか。

この設問、生物分類技能検定試験1級の問題に似ているなぁーとも感じました。
このあたり、来年はどうなるんでしょうね。
ほとんど同じか、ぜんぜん違うか、どっちに転ぶのかいまから楽しみです。

以上、『専門知識と応用能力』に関しては、答案用紙の指定枚数は別として(いやいや別でもないかな)、ほぼ事前の予想どおりだと評価していいんじゃないでしょうか。

では!

2013年8月5日月曜日

技術士第二次試験 選択科目Ⅱ-1の問題文【建設環境】

筆記試験、お疲れさまでした。
ここ沖縄では久しぶりに台風の影響もなく、ふつうに暑いさなかで試験が実施されました(室内はもちろんクーラー完備です)。
聞くところによると県外では豪雨や地震などいろいろとあったようです。

皆さん、どうだったでしょうか。

周りの身近な受験生やSUKIYAKI塾の掲示板を覗いてみると、解答に使用する答案用紙の指定枚数が問題ごとに違うことに戸惑ったひとが多いようですね。

試験問題自体についてはざっくり言って、
出題ネタは予想どおり、
要求レベルは順当だったようですね。
それでも問題数が多いために時間内で書ききるのが大変だったと思います。

午前の択一はほぼ過去問を踏襲した内容だったとのことで、ある意味1次試験よりも簡単だったかもしれないと。
試験開始直後はそのことに喜んだものの、15問を解き終わった時点で試験終了時刻までだいぶ余裕があることに気づいたとたん、午後の記述の時間が足りないだろうとの懸念が膨らみはじめ、択一試験に対するギモンというか不満が弾けた、との意見も聞きました。

そういったナマな話を聞くと、試験方法が変更になった初年度受験生のご苦労は察して余りあるなと感じ入った次第です。

それでも試験直後の皆さんの顔を拝見すると、爽やかで晴れやかな表情のひとが多かったので、これは皆さん手ごたえアリだったんだろうなとこちらも嬉しくなりました。

それでは以下に、試験問題(記述もの)を振り返ってみましょう。

未知との遭遇【伊平屋島】

まず、専門知識と応用能力に関しては、専門知識と応用能力がそれぞれ分かれたような出題でした。
専門知識のほうは次の4つから2つを選ぶスタイルでした。
  • 環境再生における順応的管理
  • 改正環境影響評価法
  • 建設リサイクル
  • 生態系ネットワーク
当初予想されていた、これまでのジャンル分け(道路、緑地、都市、鉄道、港湾(沿岸域含む)、電力、河川、水質)は全然関係ありませんでした。

建設リサイクル以外は自然環境系のかただったらどれでもOKだったと思います。
とはいっても2つ目を選ぶのは大変だったかもしれません。
そして建設リサイクル、昨年に続いてもう1回きましたね。

9-11 建設環境【選択科目Ⅱ】
Ⅱ 次の2問題(Ⅱ-1,Ⅱ-2)について解答せよ。(問題ごとに答案用紙を替えること。)

 Ⅱ-1 次の4設問(Ⅱ-1-1~Ⅱ-1-4)のうち2設問を選び解答せよ。(設問ごとに答案用紙を替えて解答設問番号を明記し,それぞれ1枚以内にまとめよ。)

  Ⅱ-1-1 環境再生等における順応的管理の基本的な考え方及びそのプロセスについて述べよ。また,順応的管理を実際の事業で適用する上での留意点を3つ挙げよ。

  Ⅱ-1-2 平成25年4月1日から施行された環境影響評価法の主な改正事項を2点挙げ,それぞれの改正の背景内容を述べよ。

  Ⅱ-1-3 建設リサイクルを取り巻く課題を3つに大別して,それぞれ,概要を説明せよ。また,課題を1つ取り上げ,課題解決に資する具体的な対応方法について述べよ。

  Ⅱ-1-4 「生態系ネットワーク」の考え方を説明し,ネットワーク形成のための具体的対策を建設環境の技術士の立場から2つ挙げて留意点を述べよ。

Ⅱ-2は次回とします。

では!

2013年7月12日金曜日

外来種の根絶事例

毎日暑いですね。
先日、フィールド調査中に、仲間のひとりが目の前でへたり込み、気分が悪いと言い出しました。
水分は取っていたのですが、塩分入りの飴を口に入れた途端、「視界が晴れてきました」なんて言うもんですから、本当に危なかったです。熱中症発症寸前の危ないところ、というか発症しているといえるかもしれませんね。
皆さんも十分に注意してください。

不忍池【東京都台東区】

今日は、大変興味深いネタがあがっていましたので紹介します。
「外来種の根絶」への取組はこれまでにもいろいろと行われていて、でもやっぱり根絶するのはほぼ無理だとの認識で一致していたわけで、いまでは拡散を防ぐという方向性に対策がシフトしていたと思っていました。
でも地域根絶という範囲を限定した取り組みであれば「根絶」は可能であることをこの記事は教えてくれました。
環境部門(自然環境保全)のひとは必修事項ですが、建設環境(自然環境保全系)のひとも要チェックです。
特に「2.防除試験の手法」などは手順が示されているので、とても参考になります。

報道発表資料



平成25年7月11日

特定外来生物アルゼンチンアリの防除手法開発及びその成果について(お知らせ)

 特定外来生物※1であるアルゼンチンアリ※2(南米原産)は、平成5年に広島県廿日市市において国内初の定着個体群が確認されて以降、平成25年5月現在までに1都2府9県において、定着が確認されています。
 今回、平成22年にアルゼンチンアリの定着が確認された東京都大田区内において、環境省、独立行政法人国立環境研究所及びフマキラー株式会社が連携して地域根絶に向けた防除試験を実施し、99%以上の防除効率※3を達成するに至りました。これまで世界的にも、外来種としての本種の根絶に成功した事例はほとんどなく、今回の試験により、根絶に向けた防除手法が確立される可能性が示されました。現在も試験は継続中ですが、これまでの成果をふまえ、環境省で作成している「アルゼンチンアリ防除の手引き」を改訂しましたので、防除試験事例とあわせてお知らせします。

I.東京都大田区内における防除試験

1.防除試験の概要

 東京都大田区の大井埠頭、城南島は、昭和40~50年代に造成された港湾地域で、国内有数の海上運輸の物流拠点となっています。環境省では平成22年より主要港湾地域での外来種モニタリング実施しており、平成22年10月に同エリアでアルゼンチンアリを初確認しました。
 このため、同エリアにおいてのアルゼンチンアリ個体群根絶を目標とし、環境省、独立行政法人国立環境研究所及び、フマキラー株式会社が連携して、根絶目標達成のための防除手法の開発試験を平成23年4月から開始しました。
 その結果、同エリアにおいて、99%以上の防除効率を示す手法を確立しました。

2.防除試験の手法

[1]目標の設定
 目視によるモニタリング調査により、大田区大井埠頭、城南島においては生息範囲がそれぞれ約8.5ha、16ha以内の範囲であることを確認し、定着エリアからのアルゼンチンアリ個体群の根絶を目標として設定しました。
[2]防除計画区域の設定
 アルゼンチンアリの分散を想定して、生息が確認されたエリアを包囲するかたちで防除計画区域を設定しました。
[3]防除期間の設定
 防除開始時より3年間を防除期間と定め、個体群の抑制効果を判定しつつ根絶達成に向けた対策を順応的に検討することとしました。
[4]薬剤による防除方法
 室内レベルの薬効試験および文献データに基づき、殺虫剤フィプロニルがアルゼンチンアリに対して高い効果を示すことが明らかであったことから、フィプロニルを主成分とするベイト剤及び液剤を用いた化学的防除を採用しました。
 フィプロニルは、昆虫の神経系に作用して殺虫効果を示す殺虫剤です。遅効的(すぐに殺虫効果を示すのではなく、ゆっくりと効く)で、餌に混ぜて働きアリに巣に持ち帰らせることにより、巣内の他の成虫や幼虫にフィプロニルが浸透して、巣内の個体を死滅させる効果があります。
 防除計画区域内の道路沿いおよび建物沿いにベイト剤(フィプロニル含量0.005%)を、間隔をおいて設置し、ベイト剤は月おきに交換しました。薬量と防除効果の関係をみるために、試験区を分割して、標準的な薬量を投下する高薬量設置区(5m間隔で設置)、その半分の薬量を投下する低薬量設置区(10m間隔で設置)、及び無処理区(設置無し)を設定しました。試験期間中、下記の個体群動態モニタリング調査の結果をみながら、ベイト剤の設置数を調整しました。具体的には、夏期に個体群密度がピークを迎えた時は、薬量を増やし、冬期に個体群密度が低下したときには薬量を減らしました。
 さらに、試験期間中、アルゼンチンアリのコロニーが発見された場合は、液剤(フィプロニル含量0.005%)を直接散布して巣ごと防除しました。
 なお、ベイト剤及び液剤の処理量から、フィプロニルの環境中予測濃度を計算して、環境基準値以下であることを確認しています。
[5]個体群モニタリング調査
 大井埠頭、城南島では目視踏査による個体観察法と調査用粘着トラップを用いた個体群動態モニタリング調査を行いました。城南島では、試験区のデータに基づき、防除効率を計算しました。

3.防除試験による効果

 城南島においては、防除実施前は広範囲でアルゼンチンアリの個体が確認されていましたが、防除を継続することにより、平成25年5月13日の調査時では個体が確認された箇所は僅かに点在するのみであり、本調査からも防除の効果を確認することができます(別添1)。
 城南島において、粘着トラップ1個あたりのアルゼンチンアリ捕獲数(図1)から、試験開始時の2011年度4月から防除実施後の8月にかけてのアルゼンチンアリの密度の変化率を計算した結果、無処理区では84.61倍となり、それに対して、低薬量設置区及び高薬量設置区では、いずれも0.21倍になりました。これらの数値より低薬量設置区及び高薬量設置区の初年度の4月から8月の防除効率は、いずれも99.75%であり、低薬量でも十分に高い効果があることが示されました。また2年目以降も個体数は極めて低い状態を維持しています。
粘着トラップ1個あたりのアルゼンチンアリ捕獲数(2011年)
図.1 粘着トラップ1個あたりのアルゼンチンアリ捕獲数(2011年)

4.防除コストの計算

 城南島における1年目の薬剤コストは高薬量設置区で約13万4,000円/ha/年及び低薬量設置区で約6万6,000円/ha/年、2年目では、発生状況に合わせて薬剤を減量したため、それぞれ約6万8,000円/ha/年、及び約5万3,000円/ha/年になりました。

5.試験結果からの考察

 以上の結果より、毎月定期的にベイト剤を設置することにより、確実にアルゼンチンアリ個体群を抑制して、根絶に近づけることができることが明らかとなりました。また、防除にかかるコストも、ベイト剤の設置を的確に行うことにより、年度を経るごとに少なくすることができることも示されました。今回の防除手法を標準として、他の地域における防除にも適用して、その効果を検証するとともに、防除効率や生態影響に関するデータを収集して、さらに確実にアルゼンチンアリを根絶に導く手引き作成へと結びつけていきたいと考えています。

II.アルゼンチンアリ防除の手引き改訂

 環境省では、平成18年度から全国数か所で実施してきたアルゼンチンアリ防除モデル事業の成果及びその他の国内外の防除事例を踏まえ、平成21年3月に「アルゼンチンアリ防除の手引き」を作成し、環境省のホームページにおいて公表する等、普及啓発に努めてきました。このたび、東京都大田区の防除事例や国内各地での防除事例を踏まえ、「アルゼンチンアリ防除の手引き」を改訂しました。今回の改訂では、東京都大田区の防除事例を踏まえた経費試算と効果について具体的に紹介するとともに、最新の情報をもとに防除の事例を更新しました。
別添2:
東京都大田区での防除概要(アルゼンチンアリ防除の手引きより抜粋)
別添3:
アルゼンチンアリ防除の手引き

III.今後の展望

 今後は、今回改訂された「アルゼンチンアリ防除の手引き」を基に、全国各地で確認されているアルゼンチンアリ侵入個体群の防除が実施され、防除効果に係るデータを収集して、さらに効果的な防除手法の確立にフィードバックすることが重要です。また、根絶確認についても、効果的な誘因トラップを開発するなど、確実な手法の開発が、今後の課題となります。
参考
※1 特定外来生物について
 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づき、生態系、人の生命若しくは身体、農林水産業に係る被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものを指定していいます。これら特定外来生物の飼養や移動及び輸入等には同法の許可が必要です。平成25年4月1日現在、105種を指定しています。
※2 アルゼンチンアリについて
アルゼンチンアリは南米中部のブラジル南部からウルグアイ、パラグアイ、アルゼンチン北部にかけてのパラナ川流域が原産で、人間の活動に随伴して分布を拡大する放浪種です。
 世界的に侵入・分布拡大を続けており、競争力・攻撃性が非常に高く、侵入地では競合により在来のアリの種数を著しく減少させます。ハワイ、オーストラリア、ヨーロッパおよび我が国における侵入地域ではごく一部の種を除きほぼ全ての在来アリが駆逐されたことが報告されています。このように在来アリ類の多様性を減少させ、生態系に悪影響を及ぼすことから、平成17年6月に本種は「特定外来生物」に指定されました。また、IUCN(国際自然保護連合)の「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選定されています。
 また、人間への被害として、同種は地面など巣穴を造るといった固定化したコロニーをもたず、住居空間でも大量に侵入し、そこに留まり食べ物に群がったり、徘徊するなどの不快を与えたりします。また、農作物の芽や蕾、果実を食害したり、農業害虫であるアブラムシ類やカイガラムシ類などを外敵昆虫から保護することで、被害を助長したりするなどの農業被害事例も世界的に報告されており、アルゼンチンアリを見つけた場合は早急な防除を行う事が重要です。


※3 防除効率
 4月から8月にかけての個体数増加率を処理区と無処理区で比較して算出した値です。
[1 - (Cb × Ta) / (Tb × Ca)] × 100
Cb:無処理区の4月の密度
Ta:薬量投下区の8月の密度
Tb:薬量投下区の4月の密度
添付資料