2023年7月20日木曜日

環境部門 必須科目Ⅰ 持続可能で強靭な社会経済を実現するためのアプローチと放射性物質汚染冷却水等の処理水の海洋放出

今日は環境部門の問題文を取り上げます。まずは必須科目から。

19 環境部門【必須科目Ⅰ】
Ⅰ 次の2問題(Ⅰ-1,Ⅰ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記し,答案用紙3枚を用いてまとめよ。)

Ⅰ-1 令和4年版の環境白書によれば,現在,「気候危機」とも言われている状況にあり,また,大量生産・大量消費・大量廃棄のライフスタイルは,大量の廃棄物や排出ガス,排水等を発生させるとともに,生物多様性の損失を招き,地球環境に限界をもたらしつつある。これらの危機に対処するためには,持続可能性を実現するための「脱炭素」,「循環経済」,「分散・自然共生」という多角的かつ相関している3つの切り口からのアプローチが必要である。以上を踏まえ,持続可能で強靭な社会経済を実現するためのアプローチについて,以下の問いに答えよ。

(1)上記の切り口を踏まえ,技術者としての立場で3つ以上の観点から課題をそれぞれ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち,国際的目標達成の困難性が高い課題であっても最も重要と考えるものを1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を,環境部門の専門技術用語を交えて示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)~(3)の業務遂行に当たり,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から必要な要件を題意に即して述べよ。

建設部門と同様、課題は「3つ以上の観点」から抽出することが求められていますね。まぁこれまで通りの3つでもOKです。
環境白書からザックリ出題されているので取組やすいですね。皆さん各自で準備していたネタが使えたと思います。それを問題文で問われている3つの切り口からのアプローチであることがわかるように記述できたらバッチリです。

Ⅰ-2 平成23年(2011年)3月に発生した東日本大震災と,それに伴い引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所内原子炉群の損傷により,放射性物質に汚染された大量の冷却水等が発生した。この冷却水等については,トリチウム水以外の大部分の放射性物質をALPSという浄化装置を通して除去し,処理水として同敷地内に設置されたタンクに保管されてきた。その保管量はタンク容量の97%(令和5年(2023年)4月現在)になっており,対応が急がれている。政府は,福島県はじめ関係者に,同処理水について,トリチウムは国が定める濃度限度の40分の1,500Bq/L以下,トリチウム以外の核種も規制基準の100分の1以下の濃度に低減させたうえで海洋へ放出することの了解を得るべく説明を続けてきたが,このたび令和5年度(2023年度)中に同処理水の海洋放出を行うこととなった。以上のことから,本件事案にかかる技術的側面,環境への影響に関する知見,合意形成といった観点を踏まえつつ,以下の問いに答えよ。

(1)技術者としての立場で,処理水を海洋放出することに際して3つ以上の観点から課題をそれぞれ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題の中から最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を,環境部門の専門技術用語を交えて示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行したうえでなお生じうる課題と,それへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)~(3)の業務遂行に当たり,技術者としての倫理,様々なステークホルダ間でのコミュニケーションや合意形成の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。


2019年5月当時の福島第一原子力発電所敷地
【福島県双葉郡大熊町・双葉町】

ALPS処理水の海洋放出が問われるとは夢にも思いませんでした。参りました。きちんと考えていなかったです。どちらかというと水産部門の技術士として福島県沿岸産(東日本沿岸産)の水産物への影響や風評被害などについていろいろと考えていました。
これからわたしもじっくり考えてみようと思います。

最後の設問(4)は技術者倫理だけでなくコミュニケーションについても問われていますね。これについても驚きました。まぁコミュニケーション手法ではなく、あくまでそのために必要となる要件、留意点なのですが。

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