2023年7月20日木曜日

自然環境保全 選択科目Ⅲ 池のかいぼりと除染済土壌等の再生利用

「問題解決能力及び課題遂行能力に関する」問題Ⅲ、Ⅲ-1が池のかいぼり、Ⅲ-2が除染済土壌等の自然公園事業での再生利用でした。池のかいぼりはTV番組を想起したためちょっと笑みが漏れましたが、2つめの問題文に目を移すと、環境部門必須科目ⅠのALPS処理水と対をなすかのように、福一原発事故による放射能汚染の除染処理後の土壌等再生利用についてのものでした。原発の放射能汚染処理後についてこうまで続けて問われるとは思わなかったのでしばし茫然となりました。

皆さんどちらを選択されましたでしょうか。実際に汚染処理土壌の再生利用に携わっているひと以外は外来種対策としての池のかいぼりのほうを選んだのではないでしょうか。こっちは実際に取組んだことがなくてもTV番組の視聴経験だとかニュース記事などの記憶をもとに専門家ならではの視点から課題を抽出できそうですよね。

Ⅲ 次の2問題(Ⅲ-1,Ⅲ-2)のうち1問題を選び解答せよ。(赤色答案用紙に解答問題番号を明記し,答案用紙3枚を用いてまとめよ。)

Ⅲ-1 多種の外来生物が蔓延している都市公園内の池(1ha)について,かいぼりを実施し,主に在来生物により構成される生態系を取り戻すための事業が行われることになり,自然環境保全技術者の立場で事前調査及び実施計画策定を担当することとなった。

(1)事前調査及び実施計画策定に当たり,技術者の立場からどのような課題が考えられるか,多面的に検討したうえで課題を3つ示し,その内容を述べよ。

(2)前問(1)で示した課題のうち最も重要と考えるものを1つ選び,重要と考える理由とその課題に対する解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がる将来的な懸念事項とそれへの対応策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。


わたしもずいぶん昔に業務でとある農業ダムのかいぼりに係る環境調査に関わったことがあり、かいぼりして救出したミナミメダカの一部を自宅で繁殖させています。増えすぎたメダカを生きもの好きのひとに配ったり、ラムサール条約登録湿地のビジターセンターにも譲渡したことがありますが、沖縄県では令和2年11月に沖縄県希少野生動植物保護条例が制定され、これまでのようには譲渡できなくなっちゃいました。そうはいってもメダカたちは人間の都合などお構いなしにどんどん増えるばっかりですから、いったいこれからどうしたものかと悩んでいます。

Ⅲ-2 原子力災害後,福島県内で除染により除去した土壌等(総発生量見込み約1,330万m3)は,同県大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設(約16km2)に保管されている(一部搬入中のものあり)。同土壌等のうち線量が低く(8,000Bq/kg以下)再生利用可能なものは,公共事業等に活用することとなっている。同土壌等を国立,国定公園において,国又は県の自然公園等事業で使用する場合を想定し,以下の問いに答えよ。

(1)盛土材料が必要な具体的な1つの事業を想定し,当該地で同土壌等の再生利用を行う場合,技術者の立場で,計画,施工,運搬・管理の工程を通じて多面的に検討したうえで,合意形成及びその他の課題2つの計3つを抽出し,それぞれの課題の内容と対応の基本的な考え方を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち特に重要となる合意形成について,複数の解決策を,専門技術用語を交えて示せ。

(3)前問(2)で示した解決策を実行しても生じる可能性のあるリスクとそれへの対応策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

特定廃棄物埋立情報館 リプルンふくしま
【福島県双葉郡富岡町】


設問(2)では最も重要な課題が問題文で「合意形成」と指定されているのも驚きました。これは必須科目Ⅰ-2のALPS処理水の問題文でも最後の設問(3)では技術者倫理だけでなくコミュニケーションについても問われたことと共通していると思います。放射能汚染については合意形成といった多様な関係者とのコミュニケーションが最もデリケートで最も配慮すべき最も重要なことであることを反映した問いだからなのでしょう。問題文を通して、ただの技術士筆記試験問題とは違った重みで技術士の社会的な役割について考えさせられることとなりました。

先月はちょうどSUKIYAKI塾東北主催の「福島のいま」と題したツアーに参加し、(一定濃度(8,000Bq/kg)を超える放射性物質を含み環境大臣が指定した廃棄物である)特定廃棄物の埋立に関する情報施設「リプルンふくしま」をはじめ特定廃棄物の埋立処分場やセメント固型化処理施設などを見学してまわりました。
福島には震災後これまで3回、たまたまですが4年ごとに訪れています。
1回目の震災から4年後の2015年時点ではまだまだ瓦礫がそこかしこに放置されていましたが、2019年では放棄された田畑などに汚染された土壌等が詰まった黒いフレコンバックがうずたかく積みあがっていました。2023年ではそのフレコンバックがほとんどなくなっており、人間活動エリアの除染がだいぶ片付いたように見受けられました(森林などの除染はまだまだ進んでいませんが←森林部門森林環境Ⅲ-2で出題されました!)。再生利用できないものはセメント固型化ののち埋立処分され、本問題のように再生利用できるものは中間貯蔵施設にて保管されているわけです。
今後も震災からの復興を追いかけたいと思っています。

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